ERB作品感想文集
『ターザンの復讐』
Illustrated by Motoichiro Takebe
この本の表紙絵は権利者である故武部本一郎夫人・武部鈴江さんの許諾により転載しています
ハヤカワ文庫特別版SF「ターザンの復讐」
永遠のターザン
by 別所信次
ターザンは永遠だ。バローズの作品の中で破綻の最も少ない設定というのがその理由だ。他に破綻のないものとして「ウォー・チーフ」とかあるけれど、やはり出世作のこの勢いには勝てない。そして今でも新鮮である。
“暗黒大陸に生まれ類人猿に育てられた自然児ターザン――だが彼には英国貴族の高貴な血が流れている――そのターザンの愛と冒険の活劇!“ いやーやっぱり勝てませんね。日本人である自分からすれば「アパッチデビル」も結構得点稼ぎますが、でも本家アメリカで1910年代では、西部開拓時代に余りにも近すぎて、ターザンの勝ちでしょうね。繰り返し繰り返し映画化されるのも不思議ではない。
「高貴なる野蛮人」というのは魅力的です。初めて読んだ中学生の時から、そしてバローズの作品の中で何度も何度も繰り返されるこのキャラクターに参りました。今読んでもぞくっとくるものありますね実際の所。バローズに惹かれる最大のものはこういうキャラクターを生み出せる所にあるのでしょう。2000年の現代の観点から見れば目をつぶらなくてはならない所が多く、所謂文学作品でもなく普通ならば放り出される古臭い小説というのが本当の評価だろう。けれども放り出す事無しに引き付ける物が確かにあるといいたい。(ファンの贔屓目かもしれないが)
もうひとつ現在の自分の感じている事はこの時代の小説はそれ自体が完結した娯楽であるという事。近頃の映画化を意識した小説と違い、小説が小説として完結している事、やたらに細かなものの描写が無く安心して読める事。まあこれはテレビ無しに生活している僻みでもあるのかもしれないが、最近のまるでノベライゼイションのような小説の多い事への反発かもしれない。
最後に、バローズのヒーローたちの中で唯一21世紀に生き残れるのはターザンだけでしょうか、個人的には他のヒーローも残ってほしいですが、、、
―――――――――――――――今の子供たちも“ターザンごっこ”をするのだろうか?
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