ERB作品感想文集


『モンスター13号』

創元推理文庫SF『モンスター13号』


MZTさんのサイト「書物の帝国」の読書日記コーナー「魔法の本棚」より転載

by MZT

 E・R・BのSF冒険世界へようこそ!の長田さんから記念ヒット本として頂いたE・R・バローズ『モンスター13号』(創元推理SF文庫)を読了。読み終わったとき、思わず「ギャフン!」とうなりたくなりました。最近ギャフン落ちの本を読む機会が多いみたいで、これまた相当なギャフンSFでした。「優秀な生物博士であるマクスン教授は、生命の神秘を探るべく日々実験を繰り返していた。そしてついに人工人間をつくることに成功する。しかしながら、その実験の失敗物の処理で誤解を受けないように、教授はボルネオ沿岸の小島に研究所をつくって、人造人間の開発を続けた。醜悪な風体、虚弱な知能を持った出来そこないの開発には成功するが、13号目にしてやっと教授は完全無欠の人造人間の製造に成功する。しかしその一方で、狂暴な首狩り族の酋長が教授の美しい一人娘ヴァージニアを誘拐して、自分のものにしようとたくらんでいたのだ……。」

 この本自体はハヤカワ文庫SFで中村能三氏による訳で読めるのですが、バローズにこだわりを持たれている厚木淳氏の訳でまず読みたかったのでした。(それにイラストが武部本一郎氏だし。)バローズには不思議な魅力があって、一度読み始めると止まらなくなるというテンポの良さがあります。さらにプロットのうまさが挙げられるのではないかと思います。美しい娘を巡っての陰謀が二重、三重に絡み合って、物語に厚みをつけているという点に読者は引きこまれることでしょう。バローズの作品は、映画を見ているような高揚感があって、この『モンスター13号』も13号と原住民との戦い、オラウータンと13号との戦いなどなど、見せ場もたくさんあってわくわくします。純粋な愛のために戦う13号に読者は感情移入してしまうことでしょう。でも絶対オチにはびっくりするなぁ。ミステリ的なトリックといえばトリックなんだけれども、こういう手法に慣れていない人にとっては「ギャフン!」とうなることは請け合い。なるほど、これはもう一度何らかの形で復活してもらいたい本です。マッドサイエンスものとしても、SFミステリとしても、冒険活劇としても十分面白いので、古本屋で見かけたら購入することをオススメしたい。


なお、「書物の帝国」には『失われた大陸』の紹介もされています。


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