Illustrated by Motoichiro Takebe
創元推理文庫SF「地底の世界ペルシダー」
At the ERB's core.
by 別所信次
火星、暗黒大陸アフリカ、絶海の孤島、、、ときてお次は地球の中心である。まったくよく思い付くもんです。(アイディアはパクリだと言われるけれど)
さて私にとってペルシダーについては少年向け概略版とはいえ、一番始めに読んだバローズである。挿し絵はもちろん武部画伯であった。蛇足ですが、同じ少年向けSFシリーズで読んだのは銀河パトロール隊(これも挿し絵は武部氏)でした。こうしてみるとこんな自分になるべくしてなったという感じです。元に戻って、ペルシダーを今読み返すとやはりこの少年向けの本の印象が強い。悪い意味ではないけど。
一般的に言ってバローズの主人公たちは寄り道、放浪など思いが向くまま直感的に行動する。御多分に漏れずデヴィッド・イネスもあちらこちらふらふらとさまよう。それがゆえに、中盤で話はたるんでしまう。けれどもジュヴュナルではこの辺りが刈り込んであり、話としてはするすると流れていったような記憶がある。今では気をしっかりともって読まないと、中盤の中弛を乗り切れない、少年の心と好奇心と行動を自分に向かって言い聞かせながら。
きっとバローズは永遠の少年だったに違いない。興味の向くまま何にでものめりこみ、夢中になって時間を忘れてしまうような。歩いている時に珍しいものが見えると、その後に付いていき手に入れるか何であるかを知るまでは元の道には戻ってこない。面白い本があれば何時間も何時間も読みふける。そんな人であったように思える。
時間は全て主観的なもので客観的な時間というものはないというペルシダーシリーズのSF的(?)なアイディアは、このバローズ自身のキャラクターが言わしめたものではないだろうか。デヴィッド・イネスもバローズもそしてこれも読む読者もみんな主観的な時間の中で自由に生きたい。人それぞれの時間が流れているなら、興味の向くまま行動して何がおかしいか。自由に羽ばたけばよろしい、読者も「イネスよなんでそんなにさ迷うな。」などと考えずに「ペルシダーにはこんな珍しい種族がいるのか」とか「何とマハールはこんなことを!」という気持ちを保ち続けて、現在形で読み続けなければならない。
こんな思いを心のどこか片隅に持ちながら読むというのはやはり寂しさを感じます。こんなこねくり回した理屈を考えずに、素直にあるがままに読む事ができたらきっと幸せでしょう。余計な知識も無く、興味の向くまま読む事の出来た小学校時代の印象が一番素晴らしいのはこのせいかもしれない。中学時代そしてずーっと時は流れて今、余計な知識を詰め込み、理屈をこね、純粋でもないし素直でもない中年のおっさんにはもう同じ感動はないのだろう、、、、、、、
追記:これで終わりにするとあまりに寂しいただのおっさんの嘆きである。で、おっさんの開き直り、
そうは言ってもこちらは伊達に年は取ってないぞ。知識を持って理論武装し、経験から純粋で素直な演技に磨きをかければ、あら不思議、欠点なんぞは朝露のようにどこかに消え去り、夢中になって何度も何度も読みふける。イネス行け行け何処までも、あー素晴らしきかな中年バローズファン。