ERB作品感想文集


『ターザン』
『ターザンの復讐』

創元SF文庫『ターザン』/ハヤカワ文庫特別版SF『ターザンの復讐』


私だけの心の中の、ターザン・・・
― ターザン・ターザンの復讐を読んで その他参照 ―
    これは、私からの、ターザンへの、ラブレターだと思ってください・・・・

by おかぴー

古今東西、数ある恋愛小説のなかでも、こんなに、素敵なご本は、なかったのではないでしょうか・・・・バローズさん?
あなたは、いったい、ここで、何が書きたかったのかしら・・・
そんな、想いを私にたくさん、いだかせてくれた、ご本でした、ターザンは・・

このターザンのご本を、恋愛小説として、読むのは邪道なのでしょうか?
それとも、バローズさんは、お話だけ書いて、あとは、私たち読者の好きなように解釈してと、許してくださったのか・・・

自分の居場所を探す男のドラマ、もしくは、完璧なる肉体および精神と知性を持つ男の孤独のドラマ・・それとも、もっと単純に冒険と、ロマンと、夢のドラマ・・・

でも、私は、このご本の中で一番に、ターザンの心の中に浮かぶさまざまな、愛の形を見てしまったのでした。
なぜなら、このご本に出てくる女性たちは(類人猿のカーラを含め)、みんな、彼の心に大きな影響を与えたと思うから・・・
そして、ターザンは、その女性たちのしあわせを願った。
自分のしあわせよりも・・・・
そのためには、自分の気持ちを殺して、殺して、耐えて、耐えて・・

私は、彼の幼いころからの、特殊な生い立ちからずっと見てきて、ターザンのしあわせを心から、願っていました。
彼が、やすらぎを得られますように、彼が一番愛する人と、結ばれますように・・

それでは、彼は、彼が一番愛する女性を見つけることが、できたのか?
そして、その人と、結ばれることができたのか?
当然でしょう・・だって、ジェーンと、結婚できたじゃないですか
その上、愛する息子もできた・・・
ほとんどの人は、そう言われるかも知れない・・・

ところが、あえて、私は、言います!いえ、言い切ってしまう・・
ターザンって、そんな、単純な人じゃないって・・・
そんな、単純な愛の形しか、知らない人だったら、私は、こんなにも、ターザンに夢中になんか、なれません。

このターザンシリーズは、火星シリーズや、金星シリーズなどと、違い、いわゆる、第三者の目から、書かれています。
だから、つきはなした視覚から、その時の、詳しく状況が、描写されていますが、私は、肝心なところになると、バローズさんは、わざと、あいまいに、ごまかしてしまっていると考えるのです。もしくは、なんでもないように、書いてしまっている。

まるで、そこから先は、あなたの経てきた人生経験や、あなたの独自の心で、考えなさいって・・

あなたに、とっての、ターザン・・そして、私にとっての、ターザン・・・

ターザンは、とっても、自由な人・・
自由に生きる人・・・
自由でなければ、生きられない人・・・・

一方でてくる女性たちは、その時代、それぞれが生きる場所で、いろいろな制約に、しばられている人たち・・
その女性たちの間で、彼は、何を想い、何を感じたのでしょうか?

オルガ ・・・・
なぜ、この人は、でてくる必要があったのか・・
既婚で、ターザンの前に登場した女性・・・
別に、独身の女性であっても、よいのに、ジェーンと別れて、傷心にあえぐ、ターザンの前に、あえて、あらわれた伯爵夫人・・・
それも、悪漢の兄であるロコフの陰謀であれ、一度は、くちづけをかわしてしまったふたり・・
その、ふたりのいきさつの結末は、もっとも、平穏な形で、おさまるべく、おさまって、しまっていますが・・
私には、本当のオルガの気持ちが、なんだか、わかるような気がします。
ターザンのことを、愛してしまった・・彼女の気持ちが・・
本には、決して書かれることのない、彼女の本当の気持ちが・・

カドゥルの娘
勇気ある娘、そして、健気で、どんなに、逆境の身に落ちても、自分の良いところを、損なわなかった娘・・
自分の愛する家族から、離されて娼婦に身を落としても、彼女は、その率直で、素直なまっすぐな、性格をそのまま、持ち続けたもの・・・

彼女なら、まるで、タン・ハドロンにともに、冒険をしたタヴィアのように、ターザンの素敵な同士になったはず・・
でも、残念ながら、ターザンは、彼女を妹としか、思えなかったひとりの女性として、愛することはできなかった・・
そして、彼女が、男なら、良き友になれたのにとしか、思えなかった。
でも、彼女の方は、ターザンのことを愛していたと思わないでもないけれど、一方で、バローズさんは、異性同士の友情についても、描いてみたかったのかなとも・・・・

ラー ・・・・・
 伝説の都オパルの太陽神の女司祭長・・  そして、可哀想な人・・・
その、美しさも、かしこさも、部族の宿命のためには、愛なき結びつきの犠牲になるしか、なかった人・・
その運命に従うしかないと、思っていた彼女の前に現れた理想の人、ターザン。
しかし、その出逢いは、彼女に大いなる失望も、同時にもたらしたのでした。
なぜって、ターザンは、彼女の前で、今までこらえて言わなかったジェーンに対する、自分の赤裸々な、想いをはきだしたから・・
「俺の、女だ!」と・・・
でも、その後も、彼女が登場するということは、やはり、二人の間には、切っても切れない運命のむすびつきが、あってのではと・・

では、ターザンが、一番愛したのは、やっぱり、ジェーン?

ジェーンへの愛は、まったく今まで彼の知らなかった異質の世界への美しさのあこがれのような気がしました。
そして、彼は、彼女のために、その世界を乗り越えて、彼女の元へ行こうした・・・
もちろん、彼が、実は、グレイストーク卿の子息だったということも、ありましたが、そうであっても、なくても、彼は、かならず彼女のために、自分を捨てて、彼女のもとで、生きるのを決意したはず・・

でも、彼女は、自分の世界を捨てることができなかった・・
最初、私は、すごく、それが歯がゆかったでした・・

でも、でも、この愛へのとまどいは、実は、誰でも感じるものではないでしょうか?
自分の今まで慣れ親しんだものを捨てて、新しい世界にとびこむことを、決断するあの時代の女性、ジェーンにとって、なんて勇気のいったことか・・・
極限状態におかれ、死に直面したとき、ジェーンは、何が、自分にとって一番大切なものであるかが、やっと理解できた・・
私は、その彼女の想いがかなって、本当によかったと思いました。
彼女にとっても、ターザンにとっても、その愛する人とともに歩む願いの時が、クロスしたことに・・

でも、結婚してからのターザンたら、一見、家庭を捨てて、自由に飛び回ってばかりのように見えます・・

でも、それも、自由を愛する彼の心を理解し、彼のことを、いつも待っていてくれる彼女が、いるからこそ・・
だから、可能なことだったのだと・・・・

記憶を失い、痴呆状態になってしまったターザン・・
そのターザンを救ったのは、ジェーンのほっそりした、しなやかな手だったのですもの。

それに、彼女は、ただ待つだけの人ではありません
愛する息子が、さらわれたとき、愛するターザンに危険がせまったとき、自分の身を捨てて、敵地に乗り込むくらいの度量が、ある人だもの・・


それでは、最後に、私にとって、バローズさんって、いったい、どんな人なのか?

私の胸にある、今まで経験したいろいろなこと、いろいろな想い
でも、それが、なんなのか自分で表現したくても、私にはできないこと
でも、でも、そのまま、私の心の中に埋もれさせてしまいたくないことを、バローズさんは、私のかわりに、表現してくれた人のような気がします。

それも、あまりにも、現実すぎる世界の上ではなくて、夢のような、わくわくする冒険の世界の中で・・・
今まで、私の考えつかなかったような人、素敵なターザンさんの中に・・・

追 記
残念ながら、私には、まだ、読んでいない、ターザンシリーズの本がいっぱいあります。
だから、私の知らないターザンさんのお顔は、まだ、たくさんあるというわけです。
それらの本を通して、私は、まだ、私の知らないターザンさんに逢いに行きたいと、思いました。


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