リチャード・A・ルポフ・著/厚木淳・訳/武部本一郎・画/厚木淳・解説/東京創元社/KEY lIBRARY/1982.5.31初版/272頁
story/あらすじ
死後30年余りを経てなお、秘境、冒険、ファンタジー小説の第一人者としての地位を守り続け、次々と現れる数限りない新しい読者を、恋と冒険とロマンあふれる絢爛たる世界に誘い込む作家エドガー・ライス・バローズ。作家として、またバローズ研究の旗頭として著名なR・A・ルポフが数多いバローズ作品の中でも最高作と目される〈火星シリーズ〉に焦点をあわせ、ときには激賞し、ときには鋭い批判を加えながら、愛情をこめて語りかける。本書を飾るのは、バローズ作品のイラストを数多く手がけているアメリカの画家ロイ・クレンケルと、優美な筆致で日本はもとより欧米にもファンの多い武部本一郎の挿画。バローズ・ファンのみならず、すべてのファンタジー・SF・冒険小説ファン必読の名評論
chapters/もくじ
history/初出
BARSOOM - Edgar Rice Burroughs and The Martian Vision
by Richard A. Lupoff
Copyright 1976 in U.S.A.
comment/コメント
1冊にまとまったバローズ評としては唯一の日本語で読める版。ただし、例によって品切れ状態。絶版といわないのは、原版はマイクロフィルムなりデジタル・データなりの形であるのでよほどのことがない限り版が廃却されることはないというだけで、実態は同じである。リチャード・A・ルポフは60年代のアメリカにおけるバローズ・リバイバルの立役者の一人であり、熱心なファンにして編集者にして紹介者、評論家という人物。作家としても『神の剣悪魔の剣』などの邦訳がある。
内容は、バローズ・ファンならば楽しめるかな、という感じ。「緑色人ばかり見たあとならばどんなブスも美女に見えただろう」とか、「美女が王女ではなく庶民の娘だったら助けただろうか」とか、著者が熱心なファンとわかっているので安心して笑えるシニカルなジョークも多い。火星シリーズの分析としては甘いところもあるが、愛情が伝わってくるので気分良く読める1冊ではある。