ERB評論集 Criticsisms for ERB


翻訳者 小野耕世
「ターザンは生きている!!」

ツル・コミック社『冒険王ターザンNo.6 ハンター』解説より

1972


 早いものだ。
 なにしろ、バロウズが、はじめてターザンの物語を発表したのが1912年だから、もう、あれから60年たつ。
 その60年のあいだに、ターザンの冒険は、いろいろなメディアを通じて、拡大され、語られてきた。
 まず、映画がある。
 残念なことに、映画のターザンは、バロウズがえがいたターザンとは、まったく別のキャラタターだった。だが、それにしても、ターザンのイメージを、広く世界中に普及させたのは、なんといっても、映画の功績だろう。
 映画のなかで、ターザンを〈生かす〉ということも、たいへんなことだ。いくら芝居だといっても、ターザンを演じる俳優は、生キズが絶えない。まさに、からだを張った仕事である。
 ターザンは、テレビにもなった。
 日本でも放映されたから、ごらんになったかたも多いでしょうが、テレビのターザンは、ロン・エリィという俳優が演じている。彼は、テレビのターザン・シリーズのたった1回分を演じただけで、なんと、からだに、17か所も、キズができてしまったという。
 そのときの写真を見ると、ロン・エリィのからだは、ばんそうこうと、包帯だらけになっている。まさに〈なまきず男〉である!!
 まったく、架空(フィクション)の人物でも、ターザンのようないきのいいキャラクターを、スクリーンのなかで〈生かす〉となると、これは、なかなか楽じゃないのだ
 まてよ。いま、ターザンを〈架空の人物〉だと書いたけれど、ほんとに、そうなのかな?
 ターザンは、実在した人物ではないのか?
 過去60年のあいだに、世界中で、とくにアメリカで、熱狂的なターザン・ファンやターザン研究家が生まれている そうしたファンたちは、ターザンを、単なるフィクションとして考えるだけでは満足せず、バロウズの小説をもとにして、タ一ザンの生いたちなどを考証し、正確な年代記を作ろうとしたりする。
 そのひとりが、SF作家のフィリップ・ホセ・ファ一マーだ。
 彼は、今年の4月に、「タ一ザンは生きている──グレイストーク卿の決定的な伝記」という本を、ダブルディ社から出版した。
 これは、文字どおりの、タ一ザン(すなわちジョン・クレイトン、つまり、グレイストーク卿)についての、綿密な伝記である。
 ターザンの伝記を書こうとすると、わからないところが多い。たとえば、タ一ザンの息子のコラックは、ほんとうの息子だとすると、年齢をとりすぎている──などで、ターザン・ファンの頭をいつも悩ます問題だ。だが、フィリップ・ホセ・ファ一マーは、彼の本のなかで、そうした問題に答えている。
 すべて、そうしたターザンにまつわる疑問は、論理的に答えられなければならない。
 なぜなら、タ一ザンは、生きているのだから。


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