栗本薫:著/早川書房刊
Cover photo by Hiroshi Manabe/Hideo Azuma
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栗本薫のパロディSF短編集。執筆当時、アメリカ大統領(レーガンに負けた頃だったかな?)でピーナツ農園主出身のジミー・カーターとジョン・カーターとの名前の類似だけで突っ走ったダジャレSFが表題作だ。他にF・ブラウンのパロディ『エンジェル・ゴーホーム』とコナンのパロディ『R・E・ハワード還る』、それに当時はやっていた〈方程式もの〉が2作ほど入っていたと思う。本の装丁もパロディで、ハヤカワSFシリーズを模したものになっていた。「旦那が編集長だからって好きかってしてる」と当時はいわれていたが、「旦那が……」というよりはベストセラー作家ゆえのことだったようにも思う。
さて、この作品だ。パロディだからしょうがないのだが、タルス・タルカスの弟のサケカスだのマメカスだのは出る、デジャー・ソリスはぶくぶく太ってカーターに相手されないのに怒って無精卵を産みまくったりと、作者自身も開き直って、今世紀初頭のご都合主義小説をおちょくっている。これについては、わたしも面白がって読んだクチなので、特に強硬に批判はしない。栗本自身も〈火星シリーズ〉が好きだというのはわかるので、この程度のふざけなら一緒に面白がってもかまわないだろう。パロディに愛情がなかったらとても読めたものじゃないが、これは読める。
ただ、栗本自身はバローズが好きではあったようだが、ハワードは心酔し崇拝していたようで、本書に収録されている作品でもハワードだけは笑いの対象にはしていない。
ちなみに本書の文庫版は吾妻ひでおが表紙を描いていて(挿画もあったかもしれない)吾妻絵のデジャー・ソリスを見ることができる。機会があったら見てみてもいいかも。