野田昌宏・著/野田昌宏・解説/早川書房/1969.2.15初版/252頁
(野田昌宏・著/野田昌宏・解説/早川書房/ハヤカワ文庫JA119/1979.12.31初版/333頁)
story/あらすじ
アメリカ現代SFは、狂乱の20年代のアメリカを舞台に花咲いた。ウエルズ、ヴェルヌを継承しながら、それにアメリカならではの大胆無類のイマジネーションの新生命をふきこんだのが、わがスペース・オペラである。無限の宇宙に展開される波瀾万丈の宇宙大活劇――ありとあらゆる珍発明、新理論を配し、登場するのは絶世の美女に、身の毛もよだつベム、モンスター、そしてロケットやタイムマシンと入りみだれて、奇想天外の冒険を繰り拡げる。確かに荒唐無稽ではあるが、スペース・オペラが持つ歴史的意義はきわめて大きい。SF的空想力を、極限にまでおし拡げ徹底的に楽しむという現代SFの重要な一面をそれが創ったからだそうした要素こそ、今日のSFを築き上げた要因だからだ。
ジョン・カーター、リチャード・シートン、キムボール・キニスン、ジェイムスン教授、キャプテン・フューチャーなど、おなじみのヒーローたちのプロフィルとその縦横無尽の活躍を紹介し、、黎明期におけるアメリカSFを解析してみせたのが本書である。
スペース・オペラに限りなき情熱を燃やし、この分野の研究にかけては右に出るもののない著者が10年の歳月を費やしてものした、SF研究の重大な成果である!以上、ソフトカバー版裏書きより
星の海を超光速でつっぱしる宇宙船、身の毛もよだつ恐るべきエイリアン、レイガン片手のスペース・パトロールに半裸の美女……1930年代、アメリカSF界はウエルズ、ヴェルヌを継承しながら、それにアメリカならではの大胆無類のイマジネーションの新生命を吹きこんだ。それが、この波瀾万丈の宇宙大活劇――スペース・オペラである。本書は、SF作家・翻訳家・研究家として世に知られる著者が、キャプテン・フューチャーなどおなじみのヒーロー達のプロフィルを紹介しつつ、そのおもしろさをわかりやすく解説したファン必携のSF入門書!以上、文庫版裏書きより
chapters/もくじ
はじめに
黎明期の英雄たち
勢揃いバロウズ一家
SF英雄の誕生〈アメージング〉1928年8月号
未来3人組行状記
龕灯21MM-392――ジェイムスン教授ものがたり――
宇宙西部劇第1号
正義の味方レンズマン
太陽系無宿ノースウェスト・スミス
金星の地球人マイルズ・キャボット
宇宙歌劇(スペース・オペラ)の開幕
フューチャーメン出動
あとがき
(文庫化に寄せて)
history/初出
SFマガジン 1963.9-1965.5
『古き良きスペース・オペラ時代SF英雄群像』1969.2.15
『SF英雄群像スペース・オペラへの招待』1979.12.31
comment/コメント
古典的な、スペース・オペラ解説書。なんて、このホームページを訪問してくれるような方には説明不要な本で、これを手引きに本屋へ通った……という経験をお持ちの方も多いのではないかと思う。わたしもそうだった(私は再版された文庫の世代だが……)。で、当初から紹介したかったのだけど、残念、本が紛失していた。今回、古本屋で再会して、ようやく紹介できるようになったしだい。
いうまでもなく、事実上最初にバローズをSFファンに紹介した著作であるといってよいのだろう。大正時代に〈火星シリーズ〉の翻訳があったといっても、ターザン作家の珍作扱いであり、1篇限りだったことを思うと、この著作のすごさが見えてくる。それこそギリシャ時代からシラノ・ド・ベルジュラックを経てバローズにいたり、そして……と、スペース・オペラというか、初期の宇宙を舞台にしたSFの歴史の構築と系統的な紹介は、日本におけるSF出版史上の古典の位置づけもむべなるかな。
とまれ、未読の方がいたらぜひとも読まれることをおすすめします。バローズの章については全文収録しましたが(!)、これを足がかりにバローズからスペース・オペラ、宇宙SFへと旅立っていってもらえれば、費やした労力も報われるというものです。
(追記)
従来、文庫版を紹介してきましたが、最近、吉田さんから井岡さん経由で最初の単行本であるソフトカバー版をいただきましたので、こちらの方を紹介し直すことにしました。違いは図版とイラスト(真鍋博氏のイラストがいい味だしてます)、文面では訳書や登場人物の名前などが日本で刊行された際のものにあらためられているくらいで基本的にはおんなじです。といってもマニアは初版を好む。火星シリーズの第8巻が『火星の秘密暗殺団』になっていたり、金星の主人公がカースン・ネピアだったりするところに喜んでしまうから、わたしも病気ですねー