映画パンフレット

Greystoke
-The Legend of-
Tarzan
Lord of the Apes
(1990)

 

グレイストーク
―類人猿の王者―
ターザンの伝説


ワーナー・ブラザース


story/あらすじ

 1885年、スコットランドをあとに暗黒大陸に赴く息子のクレイトン卿夫妻に悲しい別れを告げたグレイストーク伯爵は、折から激しく降り出した雷雨に、忌わしい前兆を見たような気がした。不幸にもその予感は的中、クレイトン夫妻を乗せた船はアフリカ沖で難破し、気がつくと2人は、いくつかの死骸、気の狂った船長と共に岸に打ちあげられていた。
 それから数ヶ月後、夫妻は木の上に粗末な小屋を建てて暮しているが、健康な男児を生み落としたものの、レディ・アリスは子供に乳をふくませることもかなわぬまま、静かに息をひきとる。ほどなくクレイトン卿も、巨猿の首領、シルバービアードの攻撃を受けて世を去った。自分の赤子をなくしたばかりだった雌猿カラは、無心に横たわっている小さく白い生きものに、やり場のない愛を振り向ける。母親も幼な児も、自分たちが同種でないことを知らなかったし気にかけなかった。
 こうしてクレイトン卿夫妻の遺児は、想像を絶する運命を生きることになる。やさしいカラに保護されて、少年は猿の社会ですくすくと成長していく。何から何まで仲間と同じにやれた。しかし、それ以上のこともできた。速く走れる、泳げる、的に正確に石を投げられる。手や歯ばかりでなく、ナイフも使える(それは白骨のある木の上の家で、不思議な品々と共に見つけたのだった)、ジャングル中の動物の声を真似られる……こうして少年は、さまざまな能力と理知を雄々しさでこ次第に仲間たちに頼られるようになり、弱い者いじめの強敵にも打ち勝って猿社会の慈悲深い王者となった。カラを失い、悲しみを知ったとはいうものの、彼の世界は狭くとも平和と自由の園であった。そこに、やがて一人の闇入者が現われる。大英博物館から派遣された西アフリカの動物を調査する目的の探険隊は、古い小屋の残骸の中に、男女の骨と、なぜか猿の新生児の骨を発見して驚愕した。日記などの遺品からクレイトン夫妻の小屋であったことが判明する。間もなく一行はピグミー族の容赦ない攻撃に、次々と命を失っていく。白人の優越を過信しすぎた罰であるかのような矢の雨であった。脇腹に矢を突き立てたまま、辛くも逃げのびたベルギー人の隊員、フィリップ・ダルノーは、苦痛のあまり、木の間から射す光を背にしたたくましい若者の幻想を見たような気がした。しかしこれは現実で、若者はカラにほどこされたのと同じ手厚い看護をしてダルノーを救った。ダルノーは徐々に、りんとした気品を備えているこの猿の王者が、クレイトン夫妻の遺児、ジョンなのではないかとの確信を深めていくが、意志の疎通は不可能のように見えた。しかしある日、ふと口ずさんだ歌の一節を若者が完肇に真似るのを知って、言葉を教えるようになる。最初の言葉は“かみそり”と“鏡”であった。やがて若者は、心をかき乱す出生の秘密も含めて、複雑な概念を把握するようになる。
 こうしてジョン・チャールズ・クレイトンはダルノーに伴われ、祖父が首を長くして待っているスコットランドの館へと帰ることになる。若者の率直な笑顔を一目見て、グレイストーク家の人間であると直観した伯爵は有頂点になり、伯爵が後見人となっている美しい姪、ジェーンもまた、新しく出現したいとこと心を魅かれ合う。しかしダルノーとの別れは辛かった。2人の記念の品となったかみそりと鏡を残して去っていくダルノーの馬車をジョンは泣きながら全速力で追った。両親の肖像のある館、肉親である祖父やジェーンの開いてくれる世界はジョンを魅了し、人々もまた快活で純心な若者のとりことなっていくが、当然ながら研究対象としてしか見ない科学者の一団もおり、快く思わぬ者もいた。ジェーンに求婚していたエスカー卿は、ジョンの動物的な優位――肉体や自ずと彦み出る気品やエネルギーに脅威を感じる。教養以外には対応する術がないのだ。ある日、エスカー卿がおしの従者を折檻している現場を目撃したジョンは、弱者を守る本能に駆り立てられ、屋根から跳び降りてエスカー卿に襲いかかっていった。この一件とジェーンの拒絶で、この酒洛者の貴族の敗北は決定的となる。
 クリスマスのパーティの夜、グレイストーク伯爵が世を去った。唯一人の親族を失ったジョンの悲しみはあまりにも深かった。その苦悩に耐えきれず、ジェーンの愛を求めて彼女と交わり、婚約も交わすが、人間としてのジョンを襲った初めての不幸は、無垢な若者を打ちのめした。悲嘆が彼の中に野性をよみがえらせた。唯一人の家族を求めて、一つの生き方を捨ててきたジョンは、自分が服を着て文明のただ中に身を置いている意味を、見失い始めていた。そして決定的な出会いが、自分の中の分裂の深さをジョンに知らしめることになる。
 大英博物館の動物標本室が公開されるめでたい日、皮肉にも出資者として招かれたジョンは、ガラスの箱に押し込められたさまざまな生き物たちの遺骸を見るに忍びなく、地下に降りていく。そこで、剥製にされるのを待って檻に入れられていた“父”、シルバービアードと再会するのだ。ジョンは巨猿を街に放つが、泡を食って追いかけてきた文明人たちの一隊は、この危険きわまりないケダモノにちゅうちよなく弾丸を発射する。同じように高貴な生きものであった祖父と“父”を襲った死の違いが、ジョンの心を決めさせた。“おれの半分は確かにグレイストーク伯爵だ。しかし半分は野性なのだ”
 この苦痛に満ちた怒りの声を聞いたジェーンとフィリップ・ダルノーは、ジョンを愛するがゆえに、彼の選んだみちを受け入れるのだった。
 西アフリカのおい茂る緑の中で、グレイストーク伯爵が消えていく。やがて一個の点となって振り返った裸体は、密林の王者、ターザンのそれであった。

staff/スタッフ


cast/配役


comment/コメント

 「原作に忠実」がうたい文句のターザン映画。って、最近こんなのばっかりですが。作中、ターザンという単語はまったくでてきません。むろん監督のセンスなのですが、制作側はこれはまずいと思ったか、やけに長いタイトル(というか副題)をつけ、ターザン映画であることを賢明にアピールしています。ターザンは結局、アメリカのヒーローなので、イギリス映画にするのは無理があるのかもしれません。
 ターザン映画史上もっとも知的といわれるジェーンも、はっきりいってオバサン顔だし……要は、セクシー美女じゃないってことなんですが。ターザン役のクリストファ・ランバートは筋肉がないことをのぞけば、精悍な野生児としてまあまあ。単に猿を演じてるだけという見方もできるが……
 なお、このパンフレットはとある匿名希望のファンの方よりご厚意により譲っていただきました。ありがとうございました。けっこう立派なパンフで、手塚治虫まで寄稿してたり、びっくりしてしまいます。

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