バローズ世界の地図
World Atlas of ERB Worlds

ペルシダー(地底世界)の地図
Map of Pellucidar(Inner Earth)

野田宏一郎

Jan.1967


地底世界ペルシダー全図

 バロウズの作品は、そのどれひとつをとり上げてみても、あっさりした文章と波瀾万丈の物語にひきつけられて、ついつい夜更しをしてしまったりするのだけれど、このバロウズに身も心も捧げっくしている(!)アメリカのバロウズ・マニアの半気違い達とつき合いはじめてから、私はもうひとつ、バロウズを読む新らしさを発見した。
 それは、バロウズ・マニア達が心血を注いで完成した様々な研究である。たとえば『火星人人名録』だとか、『金星語辞典』とかいったたぐいのものだが、これを座右に置いて読むバロウズの楽しさはまた格別のものがある。
「美女ダイアン」の生地がダレル・アズだったか、それともサリの国だったけ、とか、怪獣タンドラジスとアズダイリスはどう違っていたか……などという疑問が、いちいち本文のぺージを綴らなくてもペルシダー語辞典をひけば、すぐにはっきりするというのは気持のいいものである。
 だがそんななかで、私をいちはん楽しませてくれたのは、なんといっても、ペルシダーの地図であった。
 実をいうとこの地図の原図は、バロウズ白身が書いたもので、あらかじめこの地図をつくってから執筆にとりかかったものらしい。
 おそらく彼は、この種の地図を全シリーズについてつくっていたのではないかと考えられるのだが、発表されているのはペルシダー地図のごく一部にすぎない。
 エース・ブックスの一冊として最近でた"Pellucidar"(本書の原題)には一部加筆されているが、その地図が収録されている。
 しかしバロウズ自身の書いたものだから間違いがないとはいうものの、主として第一作、第二作の舞台になる地方が収録されているだけなので、それ以降の作品になるとあまり役に立たない。そこで数人のファンがこの地図をもとにして、第三作以降の作品に出てくる地形に関する描写を徹底的にひろいあげて比較検討の上、つくりあげたのがこのペルシダー地図である。
 バロウズのオリジナルは、この地図の中央部、ルラル・アズ(アズ Az とはペルシダー語で海あるいは大洋をさす)の方へ突き出している小さな半島(かりにプートラ半島と名づけた)の部分にあたる。第一作及び第二作はこのあたりが中心になるのだが、回を追うごとに舞台はひろがって行き、たとえば第四作でターザンが特製の飛行船O-220号で着陸するのは、コルサール・アズをへだてた大陸の奥地の大密林のあたり、第三作に登場する怪物―肌は人間の死体を思わせ、頭に髪はなく、人肉を好んで食うというコルピーズは、このコルサール・アズに浮かぶ孤島アミオカプの地底に住む……といった具合になってくる。

 そこで私は二つの地図をもとにして、この『危機のペルシダー』を読むためのペルシダー地図をこしらえてみた。これを参照しながら本文を読んでいただいたなら、面白さはいちだんと増してくるはずである。また『地底世界ペルシダー』に関係ある地名も全部入っているから、そっちの方にも活用していただきたい。

以上、ハヤカワSFシリーズ『危機のペルシダー』解説より


第1巻『地底世界ペルシダー』 第2巻『危機のペルシダー』
第3巻『戦乱のペルシダー』 第4巻『地底世界のターザン』
第5巻『栄光のペルシダー』 第6巻『恐怖のペルシダー』 第7巻『ペルシダーに還る』

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