武部本一郎SFアート傑作集1

火星の美女たち

Cover Art by Motoichiro Takebe

武部本一郎:画/野田昌宏:解説 岩崎書店/0071-950781-0360/1981.08.10初版/58頁/2800円

はじめタブロー画家として出発し、後にさし絵・絵本などの児童出版美術界で活躍した武部本一郎の名が全国のSFファンに知られるようになったのは、1965年(昭和40年)の「火星のプリンセス」によってであった。武部本一郎は、このE・R・バローズの〈火星シリーズ〉全点の表紙・口絵・さし絵を次つぎと描いて、わが国のスペース・オペラの隆盛に大きく貢献した。また、海外でも反響をよび、高い評価を得た。バローズの〈三大シリーズ〉や、ハワードの〈コナン・シリーズ〉などで多くのSFファンを魅了し、まさにSFイラストを描いては比肩なき存在であったが、1980年7月、惜しくも病に倒れ66歳の生涯を閉じた。この傑作集は、確かな写実と奔放なイマジネーションとによって、絶えずSFイラスト界をリードしつづけてきた武部本一郎のSFアート120点余を全三冊にまとめた作品集である。

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comment/コメント

 児童書などで武部本一郎との関わりも深かった岩崎書店の編集による画集。早川書房や東京創元社のものと異なり、より広い範囲から絵を集められる期待があったが、早川書房版からの絵が1点もないなど、偏ったものになっていて、残念だ。
 第1集は創元文庫版の3大シリーズのカバー、口絵を集めてある。表紙には美しさでは定評のある金星シリーズのドゥーアーレー。ジャケットをとると『火星のプリンセス』の表紙がカラーであらわれる。『火星のプリンセス』のデジャー・ソリスは絵全体を見れば構図といい、描かれている内容といい、インパクトの点でも申し分ない大傑作だが、顔の描き方に多少堅さがあって、東洋人的(日本人的?)な一重まぶたののっぺらとした顔からつまみ出したような鼻がでていて、不自然な感がなくはない。後続の巻は、普遍的な美人顔になっていて、その点は武部画伯自身の考えの変化があったのだろうか。
 なお、本書は中馬さんのご協力により入手しました。ありがとうございました。

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