ターザン雑学辞典
Trash Data in Tarzan series
コミック版ターザンは日本ではこれまでに2度、翻訳出版が企画された。出版元はいずれもツル・コミック社。アメコミの翻訳出版を主に手がける出版社だったようだ。
最初の出版はいかにも安っぽく、作者さえはっきりしない代物だったが、2度目の企画は装丁が立派で、内容もラス・マニングのオリジナル・ストーリイを扱っており、読むに耐える出来になっている。……もっともこれもわずか2号で廃刊となったわけだが。連続ものだけにでていてほしかったと思うが、やむを得ない事情があったのだろう。
さてその邦訳版コミックの欄外に、一口メモ的なコラムが掲載されている。それがまあなかなかおもしろいので、収録することにした。
なお、ページの欄外のコラムという性格上、そのページに初出のキャラクターや用語の解説もあり、単独ではわかりづらい点があることはあらかじめお断りしておく。また、ターザン語の掲載のみのものは省略した。
第1巻『帰ってきたターザン』より
- ターザンは、1888年にアフリカで生まれた。赤ん坊のときに、子どもをなくした類人猿にさらわれ、ジャングルに連れていかれた。
- 英国の貴族であるターザンは、ジャングルの木の上の家とは別に、アフリカに広大な土地を持ち、大邸宅を建てた。ターザン屋敷である。
- ターザンは猿たちに育てられたので、通常 Tarzan of the apes (猿族のターザン、猿人ターザン、類人猿ターザン)と呼ばれている。
- 〈ターザン〉とは、類人猿のことばで「白い皮膚」という意味である。
- 〈マンガニ〉とは、ジャングル語で、「巨大類人猿」のこと。ここにいるのは、〈マンガニ〉である。
- エドガー・ライス・バロウズの原作によると、ターザンとジェーンの間には、ふたりの子どもが生まれている。
- 〈ダム・ダム〉とは、類人猿が敵をたおすために、仲間を集め、戦いのダンスをすること。彼らは、ジェーンをおそった猿を狩りに行く。
- ターザンはワジリ族の大酋長であり、土人たちに尊敬されている。
- 〈古代の黄金都市オパーの遺跡〉──1万年以上も前に、黄金を求めて、アフリカにやってきた人々によって築かれたという。
- ターザンは、すでにこの都市に来たことがあるので、秘密の入り口を知っているのである。
- オパーの民族が亡びてから、類人猿や土人たちがこの土地にすんでいるが、女司祭長のラーは、古代オパー民族の直系の子孫である。
- ラーは、以前ターザンに会ったときから、ターザンにあこがれていたのだった。(小説では「ターザンの復讐」をみよ)
- 〈ビーストメン〉とは、オパー民族と類人猿とのあいだに生まれた種族だが、今では、黄金都市の人口の大半を占めている。
- ターザンの原作者バロウズは、1875年にシカゴで生まれた。それから、あらゆる仕事を転々として、苦労を重ねた。
- ラーの使っている言葉はオパー語で、ターザンのジャングル語とは違う。ターザンとラーの話は、ジェーンには理解できない。
- バロウズが初めて小説を書いたのは1911年、35歳のとき。それは、火星シリーズの第1冊「火星の月の下で」(火星のプリンセス)である。
- バロウズは、1950年、75歳で死んだが、それまでに70冊近い小説を書いている。
- ターザンが初めて映画になったのは、1918年の「類人猿ターザン」であり、主演はエルモ・リンカーンであった。
- ターザンは、英語・ドイツ語・フランス語・アラビア語、それにジャングル語が話せる語学の天才である。
- 映画のターザンでは、ターザンは、カタコトの英語が話せるだけなので、これまで、まちがったイメージを与えてきているのだ。
- ターザンが初めてマンガになったのは、1928年。「類人猿ターザン」が、まず10週間、試験的に新聞に連載された。
- 最初のターザン・コミックスの作者は、ハロルド・フォスターである。内容は原作に極めて忠実で、絵物語形式だった。
- 最初のターザン・コミックは、大成功で、10週間の連載が終わると、「もっと続けろ!」という読者の声が殺到した。
- ターザンのマンガは、こうして最初から大成功のうちに続けられ、1931年3月からは、日曜版のカラー・ページにものるようになった。
- 初代ターザン・マンガ家、ハロルド・フォスターが別の仕事を始めたので、あとをレックス・マクスンというマンガ家がひきついだ。
- 映画のターザンは、初めから原作を勝手に変えてしまったが、マンガのターザンは、出発点から原作に忠実であったことを忘れずに……。
- 1932年、日曜のカラー版のターザンは、バーン・ホガースが描くようになった。ターザンのマンガ史上、最も力強いターザンであった。
- ターザンが助けた、この女の名はルタ。ホードン族から逃げてきたウォズドン族のどれい女である。
- 〈原始境パル・ウル・ドン〉とは、アフリカのどこかに存在する、時に忘れられた世界である。原始時代がそのまま残っている世界。
- 〈ジャ・ベンコ〉とは、パル・ウル・ドンの原始民族(有尾人)やウォズドン族が乗り物にしている、巨大な獣・インドリコセリウム。
- 当時、アフリカには、奴隷商人が奴隷狩りをおこなっており、危険きわまりなかった。
- バロウズは、原始世界を舞台にした小説をいくつも発表している。「地底世界ペルシダー」のシリーズには、ターザンも登場している。
- 〈グライフ〉とは、パル・ウル・ドンの原始民族(有尾人)やホードン族ののる巨大な原始犀のこと。
- ジャーザ……ウォズドン族の酋長の娘だが、色が白く生まれついたので、仲間の原始人から、カタワ者あつかいされている。
- ターザンが、ジャーザをジェーンと思ったのは、ウォズドン族に強力な果実酒を与えられ、頭がくらんでいたからだ。
- 〈ジャベンオト〉とは、ホードン族の神。しっぽがなくて、白い体。ウォズドン族は、ターザンを神だと思わせて、ホードン族を恐れさす。
- 原始の馬であるベンコは、原始の犀であるグライフより、走るのは速い。
- ブター……ウォズドン族の酋長の息子でジャーザの兄。父の地位をねらっている。
- 〈バンドロ!〉とは、ターザンが戦うときのかけ声。「さァいくぞ」
- ドー・ウル・オト……ホードン族が信奉している、しっぽのない神ジャ・ベン・オトの息子。
第2巻『王者ターザン』より
- ジャ・ベン・オト……有尾人・ホードン族が信じている、白くて尻尾のない神。
- ドー・ウル・オト……ホードン族の神。ジャ・ベン・オトの息子。
- ターザンの原作者・バロウズは、1950年3月19日、心臓麻痺で死んだ。74歳であった。
- バロウズは、生涯で67冊の小説を書き、そのうち26冊がターザン・シリーズだった。
- その中で、彼はターザン用語を発明した。
- ターザン・シリーズ以外の41冊には、「火星シリーズ」「金星シリーズ」「ペルシダー・シリーズ」で、さまざまな言葉を発明した。
- 1928年、バロウズ一家が移り住んでいた町を、「ターザナ」と呼ぶことを提唱し、市によって承認された。
- バロウズの成功した原因は、彼は、自分の作品の著作権を守ることに先見の明があったことである。
- バロウズは、エドガー・ライス・バロウズ会社を設立し、そこの社長となり、自作を出版したり、マーケットを広げたりした。
- エドガー・ライス・バロウズ会社は、現在でも、バロウズの作品によって、莫大な利益を上げて続いている。
- モグラ族……地中に住む怪人種。ドロのにおいがする。オシである。
- ターザンの小説が、初めてラジオ・ドラマになったのは、1930年代の初めであった。
- 初めてターザンを絵に描いたのは、クリントン・ペッティーという画家で、1912年のことだった。
- 最初のターザン役者は、エルモ・リンカーンで、1918年に、サイレントの「類猿人ターザン」を演じた。
- トーキーによる最初のターザン映画は、1932年の「猿人ターザン」(MGM)で、ジョニー・ワイズミューラーがターザンを演じた。ターザン役者として最も有名なワイズミューラーは、1924年と1928年のオリンピックの水泳チャンピオンだった。
- ターザン映画で初めてしゃべったのは、ワイズミューラーだった。自分を指さして「ターザン」、ジェーンをさして「ジェーン」といった。
- これが、有名な「Me Tarzan, You Jane」という言葉になってしまった。本当は、ただ「Tarzan,
Jane」といっただけだった。
- 最初のターザンのテレビ番組は、1966年にアメリカで制作された。主演は、ロン・エリイであった。これは日本でも放映されている。
- アメリカの都市によっては、子どもにターザンの本を読ませなかった。裸の男女が一緒に住んでいるのが、教育上よくないというのだった。
- アメリカでは、バロウズの研究が盛んで、バロウズのファンによって、「ERB-dom」(バローズの世界)という雑誌が発行されている。
- ターザンの最初の小説「類猿人ターザン」の単行本(1914年発行)の初版本は、現在では、75ドル(約27,000円)もする。
- バローズの「火星シリーズ」などの、見事なイラストを描いている画家に、フランク・フラゼッタがいる。
- このターザン・マンガの作者、ラス・マニングには、「ロボット・ファイター・マグナス」という、SFコミックの作品もある。
- また、マニングは、1950年に「ジョン・カーター・シリーズ」を、コミック化したことがあるが、発表されなかった。
- 戦争中のターザン・コミックス(バーン・ホガース画)では、ターザンはナチと戦ったこともある。
- ターザンとジェーンが結婚したのは、ターザン小説の2冊目「ターザンの復讐」(The
Return of Tarzan 1915)の中でだった。
- バロウズは、小説の勉強は特にしなかった。『私は貧乏から脱出しようとして、冒険小説を書き始めた』と、彼は告白している。
- バロウズは、高等教育を受けていないせいか、内容が、あまりにメロドラマチックで、偶然が重なることを、後ろめたく思っていた。
- 1930年代の中頃、コミック版ターザンの原稿料として、バロウズは、月5,000ドル受け取っていた。
- ターザン・コミックスが新聞だけでなく、コミック雑誌にも載せられるようになったのは、1936年である。
- ターザン・コミックス専門のコミック・ブックが出版されたのは、1947年だった。ジェシー・マーシュが絵を描いた。
- バロウズは、早くも1913年に、《ターザン》の名称を、商標登録している。
- 1912年、最初の小説を雑誌に売るとき、バロウズは「雑誌掲載権」だけを売り、その他の権利(映画化権など)は売らなかった。
- ターザンで莫大な収入を得たバロウズは、1919年に、カリフォルニアに移り、広大な土地と屋敷を125,000ドルで買った。
- バロウズが買った土地は、ターザンにちなんで「ターザナ・ランチ」と名付けられた。
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