加藤直之(Naoyuki Katoh)


 加藤直之といえば日本SFアートの騎手として華々しく登場し、リアルなメカニズムの描写等でそれ以前のSFイラストを一気に陳腐化させてしまったタレントの持ち主である。銀河辺境シリーズのイラストがその好例で、図解口絵の見事さは他に類例をみない。
 人物描写は男性は銅像か石膏像のような秀麗さだったが、近年(といっても何十年も前だが)はそこに柔らかさが追加されてきて、ターザン・シリーズでも何冊かこなしてのちはかなり血の通った人物像を描いている。
 そういう加藤氏の絵の中に武部本一郎の強い影響を見ないわけにはいかない。人物画や白黒イラスト等でのその筆致、色使いに顕著に見られる傾向として、それはある。『呪われた密林』のターザンの横顔などは武部のコピーだといってもいいくらい。もっとも武部氏がイラストを担当していたのと同じシリーズだから、配慮して似せたと考えるべきだが。
 他にも創元推理文庫のゴル・シリーズなど、武部からバトンタッチされたシリーズ・イラストもいくつかある。
 後年は技術の進歩とともにオリジナリティを発揮していて、なかでも特筆すべきはアパッチ・シリーズ。デザイナーによってレイアウトされたということもあるが、かなりいい絵を描いている。


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