ERB評論集 Criticsisms for ERB


野田昌宏「古典SF作家バロウズ」

世界SF全集31 世界のSF(短編集)古典篇火星の月のもとで解説より

Jul.1971


エドガー・ライス・バロウズ
Edgar Rice Burroughs(1875〜1950)
 SFのみならず、広義における20世紀の冒険小説界全体に対して、かれとおなじ位大きな影響を与えた作家は他に誰がいるかと聞かれてもおいそれとは思いつかないほどである。おそらく他には一人もいないだろう。かれの代表作といえばやはり〈ターザン〉全26篇であろうが、SFファンの間での〈火星シリーズ〉〈金星シリーズ〉〈ペルシダー・シリーズ〉の人気は決してそれに劣るものではない。ここに訳出された「火星の月のもとに」は、大衆読物雑誌「オール・ストーリィ」の1912年2月号に発表した中篇で、のちの〈火星シリーズ〉第1作『火星のプリンセス』のオリジナル版である。かれはこの作品が圧倒的な好評を博したのに気をよくして、改めて『火星のプリンセス』として長篇化し、それが契機となって、〈火星シリーズ〉全12巻が誕生した。その人気はすさまじいもので、かれの死後、熱烈なバロウズ・ファンの手によって、『火星のターザン』などというマガイものもいくつか出版されているほどである。


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