講談社 火星シリーズ4『火星のまぼろし兵団』解説より
Mar.1967
この<火星シリーズ>を書いたエドガー=ライス=バローズという人が、あの有名な<ター ザン>も書いているということは前にもお知らせしました。
バローズという人は、ほかにも、<金星シリーズ>や<ペルシダー(地底天国)シリーズ> <月世界シリーズ>など、すばらしくおもしろい話をたくさん書いていて、みんな、いろいろ な国で訳され、世界じゅうの人たちにしたしまれています。
いえ、バローズの作品くらい、みんなに心から愛されているものもめすらしいのではないで しょうか。
バローズの作品がすきですきでしかたがない――という人たちがあつまって、バローズ= ファンクラブをこしらえています。
そして、バローズや、その作品についてのいろいろな研究を発表しあったり、<火星シリー ズ>などの絵をみんなで書いて見せあったりして、とてもたのしくやっています。
バローズの本は、たとえば<火星シリーズ>だけでもアメリカで十種以上もあるのですから、 日本で出されているこの本などもふくめれば、世界じゅうではたいへんな数になります。それ に、バローズの作品はほとんど、まんが本にもなっているので、(日本にも、たくさん輸入さ れていますが)それまでふくめたら何十種類になるか、ちょっと見当もつきません。
ところが、このクラブの会員のカサドジュという人は、それをぜんぶあつめようとしています。
日本でも、講談社から<火星シリーズ>が出ると知らせてやったら、たいへんよろこんで、 さっそく航空便でお金をおくってきました。そして、さあ早く送ってくれ、送ってくれと、電報までつかってさいそくしてきます。世界じゅうのだれよりも――といっても、日本のみなさ んよりおそいわけですが――さきに、自分の手で、日本版の<火星シリーズ>をさわってみた いのだそうです。
また、この人はこんなことをいっています。
「ぼくは日本語なんかさっぱりわからない。だけど、<火星シリーズ>はもう、みんな頭の中におぼえこんでいるから、ぱらぱらとめくってみるだけで、およそどんなことが書いてあるか、よくわかるさ。フランス語・ドイツ語・スペイン語・ヒンズー語・フィンランド語など、 どこで出た<火星シリーズ>だってみんなわかるんだ。とてもうれしいぜ。」
こんなにも熟心な読者があるなんて、作者のバローズさんもさぞかしうれしいでしょうね。
comment
講談社版第4巻のの解説文全文収録です。
例によって、野田氏や厚木氏の解説に再三登場するエピソードです。しかも、子供をあやすような文章なので少し抵抗感がありますが、昔は中学生くらいを対象にしても、慎重な単語選びを要求されたのかもしれません。情報過多の現代に慣れてしまうと、健全なのか、つまらないのかわかりません。