Illustrated by Osamu Tsukasa
福島正実:訳/司修:画/野田昌宏:解説 講談社/火星シリーズ−4 /1967.05.28初版/260頁
カバー折返し
死と危険にみちた荒野をさまようカルソリスとスビアの前に、なぞの大都市とまぼろしの弓兵隊!
すべては、はらぐろいジュサール王子アストックのしわざだった。スビア王女をゆうかいしてその罪 をカルソリスになすりつけ、プタルスとヘリウム両帝国のあいだに争いをまきおこそうとしたのだ。 無実の罪をはらそうと、快速飛行艇にのって出発したカルソリスは、またしてもアストックの陰謀に おちいり、水のかれた太古の海――四本うでの凶暴な緑色人、人肉をこのむ白色類人猿、血にくるう 火星ライオンのはびこる荒野に、ほうりだされてしまった。
ぶじ、その危機を脱して、スビア王女をすくったのもつかのま、奇怪なまぼろしの弓兵隊をあやつる ロサール人のとりこになってしまったのだ……。
ピマリアの花さきみだれるプタルス王国の王宮の庭に、時ならぬ、 絹をさくような悲鳴があがった。ジュサール王国の王子アストックが、 いやがるスビア王女にらんぼうをしかけようとしたのだ。そのとき、一 とびに数メートルも跳躍しながら、飛鳥のようにかけつけた、さっそう たる青年戦士があった。はだ白く、背高く、もえるような目をしたわか き軍神さながらのその青年こそ、火星世界にその名もたかい火星大将軍 ジョン=カーターのひとりむすこ、ヘリウム王国の王子カルソリスだっ た。アストックは、さんざんなめにあって退散した――だが、はらぐろ く、執念ぶかいジュサールの王子が、そのままひきさがるはずはなかっ た。かれは陰謀をめぐらしてスビア王女を誘拐したばかりか、スパイを はなってカルソリスをおとしいれようとした。かくて、火星世界の平和 はやぶれ、血なまぐさい戦乱のちまたと化そうとする。正義を愛するカ ルソリスと美しく気高いスビアと、火星世界の運命は? (福島正実)
chapters/目次
この物語のおもな人々
カルソリス ●火星大将軍ジョン=カー ターのひとりむすこでヘリウム皇帝の王子。地球人で ある父の血をうけついで、 白いはだとすばらしい跳躍力と、火星一の剣さばきと、 そしてなにものにも屈しない勇気と正義感の持ち主。 スビア王女 ●赤色人の一族プタルス王 国のスーバン=デイーン皇 帝のむすめ。美しく気高く 男まさりの勝ち気さを持っ ている。ケオル皇帝クーラ ン=ティスのいいなずけだ が、心の底ではおさな友だ ちのカルソリスが大すき。 アストック ●プタルス王国の隣国ジュ サール王国のヌータス皇帝 の王子。わがままなうえ、 はらぐろい陰謀家で、なん とかしてスビア王女をじぶ んの妃にしたいと思い、腹 心の部下だちと陰謀をめぐ らす。 カール=コマック ●太古の火星の生き残り、 ロサール帝国のタリオ皇帝 の念力でつくりだされたまぼろしの弓兵隊司令官。だ が、いつのまにか現実の人 間になって、カルソリスの 親友として大かつやく。念 力をつかうこともできる。 ヤブ ●ロフサール帝国の大臣。タ リオ皇帝につかえているが、忠実そうな態度のうら では、いつかじぶんが皇帝 になろうとたくらんでい る。念力をつかって弓兵隊 をだしたり、食事をだした りする力をもっている。 バス=コール ●ジュサール王国の大貴族で、アストック王子の重臣 のひとり。王になりたいと いう野望をとげるため、スパイとしてヘリウム王国に潜入したり、人を殺すのを なんとも思わない残酷な おとこ 男。
history/初出
Thuvia, Maid of Mars, 8,15,22 Apr.1916,All-Story Weekly Magazine
Thuvia, Maid of Mars,1920,McClurg
comment/コメント
講談社版火星シリーズ第4弾。内容は、のちに鶴書房版に収録された同じ訳者の『火星のまぼろし兵団』と同じであると思われる。少なくとも、章題は一言一句変わらない。このシリーズは創元社版と同時期の刊行だが、カラーの表紙に挿絵が入るスタイルということもあってか、小学校高学年向けのような文章になっている。正直、大人には読みづらい。それでいてけっこう長いから、子供だって手に取るものなのかどうか? わたしの入手した本は、40年前の本だからやむをえない染みなどはあるが、子供向けにしては美本で、書店向けの補充カードも入ったままだから、誰かが買ったが読まなかったのか、あるいは書店か出版社の売れ残りが流出したのではないかと疑っている。状態がいいことに文句があるはずがないからいいのだけれど。