講談社 火星シリーズ7『火星の秘密兵器』解説より
Jun.1967
〈火星シリーズ〉をこうして、ずうっと読んできたみなさんは、もうすっかりエドガー=ライス=バローズの作品のファンになったことでしょう。〈火星シリーズ〉だけでなく、ほかの作品も読んでみたいなと思っているのではありませんか。
みなさんむきに訳されたものもそのうちにでるでしょうし、高校生になったら英語でもじゅうぶんよむことができます。
ひとつ、ずらりと書いておきましょう。
〈火星シリーズ〉全十一巻
もちろんこれはなにも説明の必要はありません。
〈金星シリーズ〉全四巻
これは、地球人カースン=ネイピアという人が宇宙船で火星にいくつもりだったところが、ついてみたら金星だったというわけで、ジョン=カーターのように金星で大活躍をするというもの。美しいお姫さまや、わるものや、海賊やなんかが入りみだれて、たいへんにおもしろいものです。
〈月シリーズ〉全二巻
これはずっと未来のお話で、月の地下にはすばらしい都市があって、そこに地球の青年がまぎれこむというお話ですが、主人公はなんども生まれかわっては、地球と月の両方にすくっている悪と、力いっぱいに戦うという、たいへんに雄大なお話です。
〈ペルシダー=シリーズ〉 全六巻
ペルシダーってどこだろうと思いますか。こんどは地球の中です。地球はボールみたいに中ががらんどうになっていて、そこに人間が住んでいるというのです。もちろん、その中心に太陽があります。これは、バローズ以前にたくさんの学者が考えていたもので、これを舞台にしてくりひろげられる冒険ものです。おとなむきですが、日本語に訳されたものがでています。
〈ターザン=シリーズ〉 全二十九巻
もちろん、おなじみターザンの大冒険です。
客船の水夫が反乱をおこしたために、アフリカの海岸においてきぼりにされたわかい夫婦。まもなくふたりのあいだに赤んぼうが生まれますが、両親は死んでしまいます。残された赤んぼうは類人猿のカラにひろわれ……というのが、この有名な〈ターザン=シリーズ〉のはじまりです。これは講談社からみなさんむきのものがでていますから、ぜひよんでみてください。
comment
講談社版第5巻のの解説文全文収録です。
この講談社版は訳者を変えて全巻を短期間に出版するという速成企画でした。なんと、1から5巻は同時刊行、というすごさです。2年先んじていた創元推理文庫版に追いつき、追い越すことでブームの需要を先食いしようという意図だったのかもしれません。大出版社のなりふり構わぬ態度は、この時代の勢いを感じさせるエピソードでもあります。高度成長期の日本だったんですね。
しかし、解説は野田さん一人でした。SFMの連載コラムでバローズをSFの始祖の一人として紹介した第一人者であり、同じく翻訳出版の第一人者である厚木淳氏はライバルである東京創元社の編集長であることを考えると、解説の人選は野田大元帥しかいなかったということはわかりますが、依頼を受けた野田さんも困ったでしょうね。ホームグラウンドは早川で、創元でも解説を書いていましたから。
このシリーズでの野田さんの解説は、明らかに子供向けで、かつ内容が薄いというか、すでにSFMのコラムなどで紹介済みのネタを分割して掲載しています。そのせいか、該当する作品への直接の解説にはなっていません。まあ、ありていにいって、さほどやる気を感じない…やむなく書いた、という感がありありです。まあ、子供向けにターゲットを切り替えて、精いっぱいの紹介を書いた、ということも言えるのではありますがね。