川口正吉:訳/オリジナル・イラスト/早川書房/SFマガジン1966年8月臨時増刊号(通巻85号)
story/あらすじ
火星最強の支配者とうそぶく凶悪無比の敵ピュー・モーゲルに拉致されたデジャー・ソリスの命は、今や風前の灯……恋人を救うべく敵地に飛び込んだジョン・カーターの運命やいかに?
chapters/目次
characters/登場人物
ジョン・カーター 知恵と勇気を兼ね備えたバルスーム(火星)上並ぶものなき英雄。もと南軍の大尉だったが、南北戦争に負けて山中をさまよう内に、突然火星へテレポートされた。時あたかも火星は群雄割拠の戦国時代。彼は持ち前の正義感から、懲悪のために活躍する デジャー・ソリス 火星第一の王国ヘリウムの王女。カーターの永遠の恋人。危地から救われたことが縁で、カーターを恋い慕うようになる。その類いまれな美貌のため、再三再四にわたり凶悪な敵にねらわれる。 タルス・タルカス カーターの無二の親友。緑色、4本腕のサーク族の首長で、豪勇無双の戦士。最初、カーターと対決するが、お互いに意気投合して、以来陰に陽にカーターを助けて活躍する。 ピュー・モーゲル 人体改造専門家によって作り出され、その秘密を盗んで逃げた合成人間。邪悪で狂気じみた頭脳と、極端な小頭、ちぐはぐな手足を持った畸型的な極悪人。ソリスを人質に奪ってカーターを苦しめる本篇最大の仇役。 巨人ジョーグ 身の丈130フィートの超巨人。知能は低いが、怪力の持ち主。モーゲルの邪悪な頭脳が、1万人の火星人の肉体を寄せ集めて合成したバルスーム史上最強最大の獰猛なモンスター
history/初出
John Carter and the Giant of Mars,Jan.1941,Amazing Stories Magazine
comment/コメント
創元推理文庫版『火星の巨人ジョーグ』に収録された表題作である中編の、本邦初訳版。SFマガジンの増刊号のスペース・オペラ特集号に所載された。この特集の背景としては、東京創元社の出版攻勢、さらには『火星のプリンセス』の大ヒットに刺激されて、というのが正直なところだったと思うが、編集長である福島正実氏の巻頭言にも「もちろん過去は過去であり、われわれは現在、そうした過去のバイタリティの、単純なリバイバルで満足することはできません」とあって、やむなく企画したことが伺える。しかし、その顔ぶれたるや見事。ハミルトン「鉄の神経お許しを」、C・L・ムーア「シャンブロウ」、アーサー・K・バーンズ「温室惑星」、E・E・スミス「ロボット復讐鬼」。スペオペのアンソロジーを組むとしたら、どれを表題作にしてもおかしくない、ビッグ・ネームの名品揃いである(スミスは違うが)。SF勃興期であったことと選者の野田宏一郎氏の奮闘ゆえのラインアップだろう。
ちなみにこの号は吉田正明さんより提供いただきました。ありがとうございます。