バローズを語るとき、武部本一郎氏を抜きにしては語れません! その、東洋的でありながらも洗練された筆致、荒々しいようで細かい筆の運び、写実的なようで幻想的な、豊満な(それでいて高貴な)美女群像を、存分にお楽しみください!
しかし、主要なシリーズはほとんど制覇しており、すごいとしかいいようがない。バローズといえばこの人! となるのも、当然といえるだろう。
バローズ以外では、アンドレ・ノートン〈ウイッチ・ワールド・シリーズ〉、ジョン・ジェイクス〈ブラク・シリーズ〉、あとなんといってもロバート・E・ハワード〈コナン・シリーズ〉なんかが思い出される。ヒロイック・ファンタジーのアーティストといえば、古くはこの武部画伯、加藤直之をちょいと挟んで天野嘉孝に至る系譜が描かれるわけだが、やはり武部本一郎のあとを継ぐ画家は現れなかった、というのが正当な評価だろう。ゲテモノとしてはバローズ贋作家O・クライン、ジョン・ノーマン〈ゴル・シリーズ〉、ジャック・ウィリアムスンなんかも異色かな? 特筆すべきはヘンリー・ライダー・ハガード『洞窟の女王』。これは小学館の世界名作全集所載のものだが、武部画伯描くところの永遠の美女アッシャを見たくないというファンタジー・ファンは皆無だろう! これだけの夢の取り合わせが、子供向けに限定されているのは、いいことなのかもったいないことなのか、評価に詰まるところではある……。 |
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武部本一郎
ニューエスト・バイオグラフィー
大正3年(1914年)4月24日、大阪・船場に生まれる。父・武部白鳳は四条派の画家。昭和7年(1932年)甲陽中学校卒業。在学中から絵画を志し、はじめは日本画、後に洋画を学ぶ。軍隊生活の後、1946年9月、第1回行動美術展へ作品「裏町」を出品、入選作となる。その後、同展の研究所賞、奨励賞を受賞、会友となる。このころ、京都新聞社賞、京展賞などを受ける。1957年上京、児童美術の仕事を始める。1966年、第54回日本水彩画展に入選、1968年同奨励賞を受賞。確かな写実と奔放なイマジネーションとによって、装画・挿絵・絵本など児童出版美術界の第一線で活躍した。
昭和40年(1965年)創元推理文庫「火星シリーズ」の挿画を描いたことをきっかけとして、SFアートの部門でも第一人者となる。
1980年7月17日没。享年66歳。生涯に手がけた単行本は絵本、装画、SFなど、ほぼ1000点を超える。
主な著書には、「火星シリーズ」「金星シリーズ」「ゴル・シリーズ」「地底世界シリーズ」(東京創元社)「ターザン・シリーズ」「コナン・シリーズ」「ゾンガー・シリーズ」(早川書房)「かわいそうなゾウ」「さようならティモシー」「ガラスのうさぎ」「ロコがよぶ」(金の星社)「ハメルンの笛吹き」(講談社)などがある。
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