Illustrated by Yoshiichi Takai
谷元次郎:訳/高井吉一:表紙/小松崎茂:挿画 秋元文庫E61/1978.03.31 初版/174頁
story/あらすじ
本書「火星のプリンセス」はエドガー・ライス・バローズの歴史的な『火星シリーズ』の第一巻となった作品で、このシリーズはスペース・オペラ(宇宙活劇)の代表的な傑作とされている。一口にSFといっても怪獣ものやロボットもの、あるいは地球侵略のテーマとかタイム・トラベルものなど、いろいろな種類があり、スペース・オペラもその一つである。
地球から単身、テレポーティションにより瞬間に五億二千万キロ彼方の火星へ移動し、妖怪変化のようなBEM(怪獣)を相手に縦横無尽の活躍をし、逆境にあって屈せず、義に厚く情にもろい本編の主人公ジョン・カーターこそ、スペース・オペラ不朽の英雄といつても過言ではないであろう。
chapters/もくじ
characters/登場人物
ジョン・カーター 地球人。バージニア州出身の南軍大尉。無鉄砲なほども勇気とすぐれた体力を持ち、火星の王女を助けて大活躍する。 デジャー・ソリス 火星の赤色人。地球人そっくりの美しい女性。ヘリウムの皇帝タルドス・モルスの孫娘で、王女(プリンセス)。 タルス・タルカス 火星の緑色人。勇敢なサーク族の副首領。ジョン・カーターとは不思議な友情で結ばれ、味方となる。 ソラ 火星の緑色人。心のやさしい侍女で、ジョン・カーターの味方。 サルコジャ 火星の緑色人。陰険な年寄りの侍女。 ウーラ 火星の怪獣。みにくいが、ジョン・カーターの忠実な番犬として活躍する。 ロルクワス・プトメル 火星の緑色人。サーク族の首領。 タル・ハジュス 火星の緑色人。サーク族のどう猛な皇帝。 タルドス・モルス 火星の赤色人。火星の平和を願うヘリウムの皇帝。 カントス・カン 火星の赤色人。ヘリウム海軍の士官で、単身デジャー・ソリス捜索の旅に出る。
history/初出
Under the Moon of Mars,Feb.1912,All Story Magazine(penname:Norman Bean)
A Princess of Mars,1917,A.C.McClurg
comment/コメント
既報の秋元書房版ソフトカバー本の、文庫化と思われる。こちらのほうが量はでていたようで、かなり長期間、書店の店頭で見かけた記憶がある。秋元文庫といえば眉村卓氏ら中学生くらいを対象にしたジュブナイルSFの専門文庫のイメージがあるが、少女小説のようなものもあったような気もするし、いま流行のYA文庫の先駆けといったところだったのだろう。
その文庫版だが、訳者はソフトカバー版と同じ谷元次郎氏だし、挿絵も同じ小松崎茂画伯(合掌)だが、なぜか表紙だけ小松崎画伯から高井氏に差し変わっている。高井氏のマンガっぽい表紙絵は、上手いか下手かをいう前に、やはり一時代を築いた大画家・小松崎茂画伯を押しのけるものではあるまいと思うが、ヤマトを契機にしたアニメ・ブームのさなかに文庫化されたという時代背景もあるのかもしれない。