火星シリーズ4 MARS series 4

火星のまぼろし兵団
Thuvia, Maid of Mars(1920)

Illustrated by Shuji Yanagi

福島正実:訳/柳柊二:画/野田昌宏:解説 鶴書房/SFベストセラーズ/1975.6.10初版/283頁


story/あらすじ

●バローズの名作〈火星シリーズ〉
 平和なプタルス王国の宮廷から、ある夜、王女スビアが誘拐された。無実の罪をきせられたカルソリスは、火星の荒野でスビアを発見するが、そこにはおそろしい敵、四本腕の怪物緑色人や、人肉を好む白色類人猿、凶暴な火星ライオンが待っていた。
 死と危険にみちた荒野をさまよう二人の前に、やがて、なぞの大都市とまぼろしの大兵団があらわれる……。

chapters/目次

花園のらんぼう者
あやしい従者
誘拐
にせどれい
わなと陰謀
緑色人だ!
緑色人のとりこ
廃墟のたたかい
火星ライオン
まぼろしの大都市
大決戦
きえた!
車輪形の城門
バルスーム帝国さいごの皇帝
まぼろしの正体
王女の悲鳴
死の広間
しかけあな
平原の決戦
ヤブの野心
はだかの戦士
前も敵、うしろも敵
白色類人猿のとりこ
脱走
運河だ!
火星大戦争
誘拐犯人
おそろしい心
皇帝の命令
放浪の戦士
殺しの報酬
死なばもろとも
火花をちらす長剣
ヘリウムへ
平和ふたたび

characters/登場人物

カルソリス 火星大将軍ジョン=カーター(地球人)の息子で、ヘリウム王国の王子。すばらしい跳躍力と火星一の剣の腕前を持つ、勇気ある青年。
スビア王女 赤色人の国プタルス王国の美しい王女。ケオル王国の皇帝と婚約しているが、心の底ではおさな友だちのカルソリスが大好き。
アストック ジュサール王国の王子。わがままで腹黒い陰謀家。スビア王女に恋して、自分の妃にしようと誘拐する。
カール=コマック まぼろし人間だが現実の世界に生き返り、カルソリスの親友となって大活躍する。
ヤブ ロサール帝国の大臣。皇帝の地位をねらっている。超能力でまぼろしの弓兵隊をあやつる。
バス=コール ジュサール王国の大貴族。残忍な野心家で、アストックの陰謀に加わる。

history/初出

Thuvia, Maid of Mars,Apr.1916,All-Story Caval. Magazine
Thuvia, Maid of Mars,1920,McClurg

comment/コメント

 鶴書房版の火星シリーズ2冊の内の1冊。訳者が同じことから、講談社版の再書籍化と思われる。講談社版は全巻訳者が異なるが、鶴書房に収録されたのは本書の福島正実氏と南山宏(森優)氏というSFマガジンの元編集長の訳本のみとなっている。本シリーズの編者が福島氏であることからきているのだろう。何度も書いているが、本格SFの紹介を精力的に行って日本にSFの夜明けをもたらした福島氏が古色蒼然たる異世界冒険譚をSFとして訳し、出版するとは、本人も内心忸怩たるものがあったに相違ない。とはいっても、売り上げに貢献したのも事実と思われる。森優氏などはハヤカワSF文庫というこの種の作品を出版するための叢書を作ることにまでなったくらい。
 本書の表紙・挿し絵はハヤカワ文庫SF版〈地底世界シリーズ〉でおなじみの柳柊二氏。柳氏は絵は上手なんだけど、女性の顔はあまり得意ではないのか、このスビア、けっこう怖い。バンスとの2ショットは本書の表紙としては洋の東西を問わず同じというのも、なかなか興味深いことですね。
 なお、本書は山名田さんのご協力により入手いたしました。どうもありがとうございました。

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