Illustrated by Motoichiro Takebe
野上彰:訳/武部本一郎:画/野上彰:解説 実業之日本社/ターザン物語3 /1961.11.01初版/214頁
story/あらすじ
この本のはじめに
みなさん。ジャングルの王者、熱血児ターザンを、よくごぞんじですね。きっと映画やテレビでごらんになったことと思います。
このターザン物語全六冊では、そのターザンのスリルと冒険にみちた活躍が、アフリカのジャングルを舞台にして、つぎからつぎへと展開されます。
映画では見られなかった、類人猿に育てられた少年ターザンのおもしろいお話があとからあとから、息もつかせないほど、ぞくぞくとでてきます。
いまからやく五十年まえ、アメリカの作家バーローズによってあらわされた、正義の味方ターザンの物語を、さあ読んでみましょう。
一九六一年 八月
訳者 野上 彰
chapters/目次
history/初出
The Beasts of Tarzan,May.16-Jun.14,1914,All-story magazine
The Beasts of Tarzan,1916,A.C.McClurg
comment/コメント
実業之日本社による The Beasts of Tarzan の翻訳、という以前に、刊行年を見て欲しい。1961年、つまり昭和36年。創元推理文庫版『火星のプリンセス』以前だ。そして、表紙のイラストに目を転じてみよう。これは……武部本一郎? そう! バローズと、武部本一郎の出会いは『火星のプリンセス』ではなかったのだ!
とある古本屋さんから通販で買ったのだけれど……その情報を提供していただいた古参SF/バローズ・ファンの方(ご本人の希望により、あえて名前は伏せさせていただきます)から教えていただいた内容をご紹介させていただきます。
現物は見たこともないのですが、「宇宙塵」117号(昭和42年11月 20日発行)に掲載されている島本光昭「バローズ翻訳史」によると――
「昭和三十六年になるとようやく全巻を出版したターザンシリーズが現われた。実業之日本社版、野上彰訳「ターザン物語」全六巻がそれである。この野上という人は、よほどターザンが気にいったと見える。値段が高かった為か余り売れなかったらしいが、それでも小学校の図書館などで広く読まれた。」
と書かれています。 「ターザンの怒り」は、おそらくこのシリーズの1冊でしょう。
訳者のあとがきによれば、ほぼ原作の刊行どおり紹介されているようで、第3巻は本家の第3巻だし、第4巻も本家の息子活躍番が刊行される予定として紹介されている。腰を据えて刊行をしようという姿勢がうかがえていいのだけれど、願わくば第7〜8巻くらいまでは出して欲しかった。
とまれ、武部氏が表紙と挿絵に絵筆を振るっていて、なかなかであった。
ちなみに表紙の剣道少年と、右下の赤い文字らしきものは、シールを貼った跡で、この本を手にした当時の子供の仕業と思われる。うーん、惜しい。