ハヤカワ文庫特別版SF〈TARZAN BOOKS〉
送っていただいた本の中でも『ターザンと黄金の獅子』が好きです。魅かれたのは、ヌマのジャド・バル・ジャに対するターザンの接し方です。いつもなら、ターザンはヌマを格好の闘い相手にするのに、そうはせず、育て教育し、信頼している。ジャドも忠実にターザンを危機から守ってくれている。いつもとは違った面を読めて楽しかったです。しかし、ターザンとジェーンはどうして、こう……離れてしまうのでしょう? そして、出逢ったら、「2度と離れたくない」と強く思うのに、ターザンは、またジャングルへ……。やっぱり、ターザンの野生の血がそうさせるんでしょうか。わたしは、もし、バロウズが生きていたら、つたない英語で「短くてもいいので、農場でのターザンの生活を書いてください」と手紙に込めて出していただろうと思う。まだ私はターザン・シリーズの一部しか読んでいないにすぎないので、他のまだ読んでいない作品には載っているかもしれない。でも、私は、野生の猿人ターザンも好きだけど、グレイストーク卿ターザンも素敵だと思ってしまうのです。『類猿人ターザン』の後半部分に少しだけ書かれた、文明の色を着たターザンの「本当は強いんだぞ!!」と内に秘めているのを、さらりとジョークをいうところが好きで好きで……! 覚えていらっしゃいますか? ターザンがダルノーと一緒に、他の友人とテーブルを囲んでいると、その内のひとりが、ターザンをからかって、ヌマを狩るという場面。あそこでターザンは、人がヌマの声を聞いて、「おっ、好機到来ですね」と言ったのを、「腹はすいてませんので……」と受け流すシーン。くぅぅ……!! カッコイイ!!
と、気付くとひとりで突っ走っておりました。すみません。もちろん、他の作品も大好きです。“凱歌”でロコフが死んでよかったと思っています。(しつこい男はダメ!!)“恐怖王”はジェーンだけでなく、ここにターザン一家あり! といった、サバイバルの猛者になった3人を見て、たくましくなったものだなあ……と思うばかりです。
では、この辺にて……。今回は本当にありがとうございました。失礼いたします。
2000.4.6
雪野ぱせり