訳者は外国語で書かれた作品を紹介する上で欠かせない存在であり、またその情熱が日本語で読む作品に乗り移ってもいきます。訳者を追いかけていろいろな外国作品を読む人もいるくらい。紹介者としての翻訳者に迫ってみたいと思います。
まずはリストアップ。コメントもこれから加えていきますが、こうやってみるとそうそうたる顔ぶれです。
バローズの紹介者といえばこの人を忘れるわけにはいきません! 日本のERBファンにとっては神のような存在でしょう。東京創元社の編集者としてバローズ紹介の仕掛け人となったばかりかターザン以外のすべての作品の翻訳を手がけた偉い人。訳者としての評価には「もう少し文章がこなれていれば」というのもあるけれど、ミステリまで含めた守備範囲の広さは大したもので、文章もこなれていないと言われれば確かに指摘はできるけど、入り込んで乗って訳すタイプだけに読者を引きつけてさらに引っ張っていくパワーはある。読みやすさでもピカイチ。
創元推理文庫601- 1 『火星のプリンセス』
創元推理文庫601- 2 『火星の女神イサス』
創元推理文庫601- 3 『火星の大元帥カーター』
創元推理文庫601- 4 『火星の幻兵団』
創元推理文庫601- 5 『火星のチェス人間』
創元推理文庫601- 6 『火星の交換頭脳』
創元推理文庫601- 7 『火星の秘密兵器』
創元推理文庫601- 8 『火星の透明人間』
創元推理文庫601- 9 『火星の合成人間』
創元推理文庫601-10 『火星の古代帝国』
創元推理文庫601-11 『火星の巨人ジョーグ』
創元推理文庫601-12 『金星の海賊』
創元推理文庫601-13 『金星の死者の国』
創元推理文庫601-14 『金星の独裁者』
創元推理文庫601-15 『金星の火の女神』
創元推理文庫601-16 『金星の魔法使』
創元推理文庫601-17 『時間に忘れられた国(全)』
創元推理文庫601-18 『失われた大陸』
創元推理文庫601-19 『地底の世界ペルシダー』
創元推理文庫601-20 『翼竜の世界ペルシダー』
創元推理文庫601-21 『海賊の世界ペルシダー』
創元推理文庫601-22 『ターザンの世界ペルシダー』
創元推理文庫601-23 『石器の世界ペルシダー』
創元推理文庫601-24 『恐怖の世界ペルシダー』
創元推理文庫601-25 『美女の世界ペルシダー』
創元推理文庫601-26 『石器時代から来た男』
創元推理文庫601-27 『石器時代へ行った男』
創元推理文庫601-28 『月のプリンセス』
創元推理文庫601-29 『月からの侵略』
創元推理文庫601-30 『モンスター13号』
創元推理文庫601-31 『密林の謎の王国』
創元推理文庫601-32 『南海の秘境』
創元推理文庫601-33 『風雲のメキシコ』
創元推理文庫601-34 『砂漠のプリンス』
創元推理文庫601-35 『ルータ王国の危機』
創元推理文庫601-36 『カリグラ帝の野蛮人』
創元推理文庫601-37 『ウォー・チーフ』
創元推理文庫601-38 『アパッチ・デビル』
創元SF文庫ハ3-39『合本版火星シリーズ第1集 火星のプリンセス』
創元SF文庫ハ3-40『合本版火星シリーズ第2集 火星の幻兵団』
創元SF文庫ハ3-41『合本版火星シリーズ第3集 火星の秘密兵器』
創元SF文庫ハ3-42『合本版火星シリーズ第4集 火星の古代帝国』
創元SF文庫ハ3-43『ターザン』
創元SF文庫ハ3-44『ターザンの帰還』
バローズのSF作品を日本に初めて紹介してくれた、偉い人。他にはレンズマンも訳しているし、創元SFの初期を語るときに忘れてはならない恩人と言うべきだろう。格調高い訳文が初期のバローズ作品のもったいぶった文語調と良くあって、いい雰囲気を醸し出している。その後、厚木淳氏が訳し直してしまったためにおそらくは手に取ることもかなわないだろうが、機会があったらぜひ手に入れてみるといい。私はちょうど訳者の入れ替わりの時期に当たったため、所持している本はかなりだぶっている。
創元推理文庫601-1『火星のプリンセス』
創元推理文庫601-2『火星の女神イサス』
創元推理文庫601-3『火星の大元帥カーター』
創元推理文庫601-4『火星の幻兵団』
創元推理文庫601-5『火星のチェス人間』
創元推理文庫601-6『火星の交換頭脳』
ファンタジーの訳者として人気のある人。なぜかペルシダーを訳している。かわいそうに、といった感もあるが、芸域は広い方がいいと思いますよ。
ハヤカワ文庫SF16 『地底世界ペルシダー』
ハヤカワ文庫SF19 『危機のペルシダー』
ハヤカワ文庫SF22 『戦乱のペルシダー』
ハヤカワ文庫SF25 『地底世界のターザン』
ハヤカワ文庫SF48 『ペルシダーに還る』
冒険SFの訳者としてはちょっとは知られた存在。マイナーな雰囲気はあるが、ハヤカワ文庫の白背や一部サンリオSF文庫などでもいい仕事をしています。
ハヤカワ文庫SF4 『月の地底王国』
ハヤカワ文庫SF8 『月人の地球征服』
ハヤカワ文庫SF12 『時に忘れられた世界』
ハヤカワ文庫SF17 『時に忘れられた人々』
ハヤカワ文庫SF21 『時の深き淵より』
ハヤカワ文庫SF35 『栄光のペルシダー』
ハヤカワ文庫SF37 『恐怖のペルシダー』
ハヤカワ文庫SF92 『モンスター・マン』
ターザンの訳者といえばこの人。なぜ途中で降りたのか? 解説でバローズの悪口を書いたからかな?
ハヤカワ文庫特別版SF101『類猿人ターザン』
ハヤカワ文庫特別版SF103『ターザンの凱歌』
ハヤカワ文庫特別版SF105『ターザンとアトランティスの秘宝』
ハヤカワ文庫特別版SF106『ターザンの密林物語』
ハヤカワ文庫特別版SF107『野獣王ターザン』
ハヤカワ文庫特別版SF108『恐怖王ターザン』
ハヤカワ文庫特別版SF109『ターザンと黄金の獅子』
ハヤカワ文庫特別版SF110『ターザンと蟻人間』
ハヤカワ文庫特別版SF111『ターザンの双生児』
ハヤカワ文庫特別版SF113『ターザンと失われた帝国』
ハヤカワ文庫特別版SF115『無敵王ターザン』
いわずとしれた翻訳界、と言うよりはSF界の重鎮。なぜこの人がターザンを訳しているのかは定かではないが、後期の秘境もので読みやすい文章はいいんですが、映画のターザンのイメージで訳しているのがちと気に入らない。
ハヤカワ文庫特別版SF117『ターザンと黄金都市』
ハヤカワ文庫特別版SF118『ターザンとライオン・マン』
ハヤカワ文庫特別版SF121『ターザンと禁じられた都』
ハヤカワ文庫特別版SF124『ターザンと狂人』
最後のターザン訳者。星新一氏の友人で、矢野氏に師事したこともあってターザンを訳す羽目に陥ったのだろう。嗜好が違うんだろうなとは思うが、丁寧に訳している。
ハヤカワ文庫特別版SF104『ターザンの逆襲』
ハヤカワ文庫特別版SF116『勝利者ターザン』
ハヤカワ文庫特別版SF119『ターザンと豹人間』
ハヤカワ文庫特別版SF122『ターザンと女戦士』
ハヤカワ文庫特別版SF125『ターザンと呪われた密林』
ミスター・スペースオペラ、宇宙大元帥こと野田昌宏氏はバローズの紹介者としても初期に重要な役割を果たした人。火星シリーズの解説がなかなか良かった。
あかね書房/少年少女世界SF文学全集7『地底世界ペルシダー』
言わずとしれた早川書房SF仕掛け人。初代SFM編集長にしてハヤカワ・ファンタジイ(後のハヤカワSFシリーズ)の刊行を果たして日本にSFを布教した偉い人。格調高い本格SFが好きで、バローズなんか大嫌いなはずだが、後に少年少女向け叢書としてSFを刊行することに力を入れたがためにバローズを訳す羽目に陥ってしまいました。かわいそう。
鶴書房SFベストセラーズ『火星のまぼろし兵団』
国土社少年SF・ミステリー文庫8『ペルシダ王国の恐怖』
おなじく2代目SFM編集長。こちらはUFOに走ってしまいましたが、ハヤカワ文庫創刊に力を尽くしたというわけで、バローズ紹介には貢献度高いです。ターザン企画の中心人物でもあり、本名(森優)で解説も書いています。
鶴書房SFベストセラーズ『火星の合成人間』