prologue
武部本一郎は、日本SF界が生みだした最初の国際的SFアーチストだ。もちろん、戦前・戦後を通じてそれ以前の日本にも、SFアートの名に値する作品を描いた画家も数多くいる。小松崎茂しかり、金子三蔵しかりだろう。しかし、最初から純然たるSF作品の売り物としてカバー・アート、口絵、挿絵を描き、それが引き金となって、SFブームを巻き起こした人物となると、武部本一郎以外にはいないのだ。
とくにヒロイックファンタジーの分野における功績にはめざましいものがあり、氏のイラストを抜きにしては、日本のファンタジー史は語れないだろう。遠く海外のファンまでをも魅了しているという事実が、その何よりの証左ではなかろうか。
ここでは、ファンタジー作品を中心に、武部本一郎の足跡を振り返ってみることにしよう。
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武部本一郎特集を掲載していた雑誌『スターログ』を入手しました。1980年1月号です。内容は、ハヤカワ文庫や創元推理文庫版のイラストと、加藤直之氏、厚木淳氏の寄稿、武部画伯の経歴など。
内容的には、特集するからにはもう少しページを割いてほしかったという気がするが、まだ存命中の頃の出版でもあるし、アメリカンなビジュアルSF系の雑誌(映画やアメコミが多い)なのでやむを得ないところか。
文章についてはいずれも短いものなので総て収録しましたが、加藤直之さんの文章に関してはご本人の意向で、現在は公開をしていません。ご承知おきください。