Illustrated by Osamu Tsukasa
内田庶:訳/司修:画/野田昌宏:解説 講談社/火星シリーズ−10 /1967.07.10初版/264頁
カバー折返し
火星の知られざる人間、透明人間、氷づけ人間たちを相手に、カーターがくりひろげる大冒険!
ジョン=カーターは、飛行艇を操縦して火星の、だれも足をふみいれたことのない世界を探検しに出発した。ほろびさったはずの古代都市ホルツに、人間が生息していた。そしてかれにおそいかかろうとする古代ののろい。偶然そこでめぐりあった孫むすめラーナと危地を脱したが、黒色人にとらえられ、神経破壊機にかけられようとする。やっとのがれて ラーナの故郷ガソルに向かうが、そこは北方の赤色人に包囲されていた。百万の大軍の前にガソルはあやうい……。カーターは、透明人間と決闘ののち、ヘリウムの大海軍をひきいて、ガソルを助けるため、最後の戦いをいどむ!
これは火星シリーズの十冊めにあたるものです。
アメリカのバージニア出身のジョン=カーターが、ふとしたことから無限の宇宙をとびこして、火星と地球をゆききできるようになり、ほろびようとしている火星で、どんなにすはらしいかつやくをしたかは、いままでこのシリーズをおよみになった人は、よく知っていることと思います。
だがこの本は、まだよんだことのない人にも、予備知識のない人にも火星シリーズのおもしろさを十分満喫させてくれるものだと思います。ジョン=カーターの火星での大冒険旅行を四つの挿話でつづっていますが、それぞれ独立した好短編といってょく、バラエティーに富んでいる点、火星シリーズのエッセンスをみな集めたものといっていいでしょう。
ほろびさったはずの古代人間、透明人間、氷づけ人間と、思いもつかない人物や事件がつぎからつぎととびでてくる小説です。(内田 庶)
history/初出
"Llana of Gathol",1948,Burroughs
comment/コメント
講談社版火星シリーズも、本書が最終巻。しかし、シリーズ第1巻の『火星のプリンセス』の奥付の日にちは昭和42年5月28日。本書は同年7月10日だから、その間1か月半弱。全10巻であることを考えても、なんという短期集中刊行かと驚くほかない。 しかも、きれいに訳者を変えてきた。短期集中刊行なだけじゃない、企画から出版までも非常に短期だったのではないかと考えられる。だって、全体の監修は誰かがやっていたはずで、その手間を考えると、誰か一人の訳者に任せたほうが簡単で確実だったに違いない。いったいどういう事情があったのか、邪推はよく書いているが、一度ぜひ本当のところを聞いてみたい。
監修は、通して解説も担当した野田大元帥では、と、これもまた邪推しています。