Illustrated by Motoichiro Takebe
厚木淳:訳/武部本一郎:画/D・A・ウォルハイム、厚木淳:解説 東京創元社/創元推理文庫601-18/1971.12.24初版/180頁
story/あらすじ
20世紀の後半に勃発した世界大戦の結果、地球は2分割され、南北アメリカ大陸を中心とするパン=アメリカ連邦が誕生したが同時にヨーロッパやアジア大陸とは絶縁し、栄光の孤立を歩むことになった。アメリカ連邦は輝かしい文明のもとに繁栄した。しかしその200年の間にヨーロッパ諸国も大日本帝国も滅亡して中国帝国と黒人帝国がヨーロッパの覇権を争っていた。その失われた大陸ヨーロッパに紛れ込んだ22世紀のアメリカ海軍将校がたどる波瀾万丈の大冒険。半世紀以上も前に、早くも現在の世界の趨勢を予言したバローズの驚嘆すべき洞察力!
chapters/もくじ
1.〜9.(章題なし)
characters/登場人物
ジェファースン・ターク | パン=アメリカ連邦海軍大尉。本編の主人公 |
ジョン・アルヴァレス | 同海軍中尉、一等航海士 |
ポーフィリオ・ジョンスン | 同海軍中尉、二等航海士 |
デルカート | 水兵 |
テイラー | 水兵 |
スナイダー | 水兵 |
ヴィクトリー | グラブリティンの女王 |
history/初出
Beyond Thirty and the Man Eater,1957,SF & F Publications
(aka.The Lost Continent,Ace Books)
comment/コメント
バローズには珍しい、SFらしいSF。大戦によって未開の地と化している22世紀のヨーロッパに迷い込んだアメリカ人の話は、時に痛快で、風刺的でもある。旧イングランドでヴィクトリーとであったところまではバローズ一流の冒険物語でもあるが、中編の長さであることが足かせになっているのか、ヨーロッパ本土に渡ってからがいただけない。主人公が状況に流されだしていくさまはヒーロー小説としてはいまいち。ただまあ、20世紀初頭に書かれたとは思えない社会派未来冒険小説というわけで、読んでおいて損はない。というか、必読の書というべきか。ウェルズと同時代の作品なのだからね。
1955年、ファンタジー・プレスの社主であり熱狂的なERBマニアであるロイド・アーサー・エッシェンバッハが雑誌に掲載されたきりだった古い作品を著作権問題を抱えたままパンフレット版で出版したのが最初の単行本。「ザ・マン=イーター」も同時期、同氏により同様な形で出版されており、2年後、SF & F Publicationsより再刊された際(公式にはこちらが初出になっている)、合本となった。後にエース・ブックスから「失われた大陸」が短いながら単独長編として出版され、日本語版もそれに依っているため、「ザ・マン=イーター」は結果的に幻の一品になってしまった。残念。