Illustrated by Ritta Nakanishi
三井ふたばこ:文/中西立太:画/小川利雄:解説 小学館/少年少女世界の名作16/アメリカ編6/1974.01.25初版
story/あらすじ
未開の地、アフリカのジャングルの中で、イギリスの名門クレートン夫妻の、長男として生まれたターザン。
しかし、生まれて一年後には両親に死にわかれ、類人猿カラに育てられ、成長していくのです。
なんども、絶体絶命の危機に追いつめられ、手にあせをにぎるような場面でも、勇気と知恵をふりしぼって、きりぬけていくターザンのかつやくは、みなさんの心をおどらせ、胸をはずませることでしょう。
chapters/目次
リップ・バン・ウィンクル
密林の王者ターザン
- 出帆
- 生と死
- 類人猿王カーチャック
- 白いさる
- ジャングルの戦い
- 知識の光
- 人間と人間
- 類人猿王ターザン
- 新しい人間たち
- シャングルのなすがままに
- じつに驚くべきこと
- 捜索隊
- 同胞愛
- 文明社会
- 終結
アポロ物語
動物記
ケティ物語
Tarzan of the Apes,Oct.1912,All-story magazine
Tarzan of the Apes,1914,A.C.McClurg
じつは私がはじめて読んだバローズ作品がこれ。10歳くらいのころだと思う。表紙の左隅、ナイフをくわえているのがターザンでしょう。
1冊に5編が収録されているので、内容が薄いと思いきや、もちろん省略もされてはいるんだけれど、けっこう原作に近い編集になっている。今回、章題を書き出してみて気づいたのだけれど、実は章題も原作の章題が(とびとびではあるのだけれど)そのまま使われていて、丹念に原作にあたってまとめたことがうかがわれる。
別のところでも書いているけれど、この叢書はすごいものだと思っている。作品選抜にしても、いわゆる名作はもちろん、少女小説、冒険小説、SF、ミステリ、ノンフィクション、伝記など、あらゆるジャンルの作品をバランスよく収録しているし、なにより、この原作にきちんとあたるという編集姿勢が全55巻に反映されているのだ。SF系の作品を上げると、ウェルズ「宇宙戦争」はもちろんだが、ドイル「マラコット海淵」、ベリャーエフ「無への跳躍」、ハガード「洞窟の女王」、海野十三「海底大陸」など、ミステリでもホームズやルパンのほか、「13号独房の問題」なんかが収録されていて、渋いのだ。
さらに、子供時代にうれしかったのは豊富な挿絵。見開きに最低小さなモノクロのカットは入っていて、10ページごとくらいに大きめのカラーイラストが入る。きれいな口絵もある。その挿絵陣が豪華なのだ。柳柊二氏が人気があったが、武部本一郎の「洞窟の女王」に、里中満智子の「少女パレアナ」なんて、おお、と思わないか? 「無への跳躍」も武部さんだったと思う。
そして、ジャケットもあり、さらに函付きで、なんと550円。途中から680円、750円になったかな? 当時としても、新書本と変わらぬ値段だった記憶がある。幼少期にこれだけのものに出会えたことが、現在の私をつくっているといっても過言ではないと思っている。
全55巻を買い与えてくれた親に感謝、です。