ターザン・シリーズ2 TARZAN series 2

ターザンの帰還
The Return of Tarzan(1913)

Illustrated by Naoyuki Katoh

厚木淳:訳/加藤直之:画/厚木淳:解説 東京創元社/創元SF文庫ハ-3-44/2000.6.23初版/364頁


story/あらすじ

ジャングルの密林で類人猿に育てられ、西欧社会にもどってきた野生児ターザン。だがこの新しい世界になかなか馴染むことができない。思い出されるのは彼のもとを去ったジェーンとの、ジャングルでのロマンスばかり。そんなある日、彼はついにフランス陸軍省から特務員に任ぜられ、密命のもと冒険の旅に乗り出すことになった。しかし、とある船旅の途上、悪漢の手にかかった彼は大海原に投げ出されてしまう。九死に一生を得たターザンが流れついた先は、なんと生まれ故郷のジャングルだった! しかもそこで思いもよらない相手と遭遇することに……。傑作冒険小説『ターザン』に続く第2弾。

chapters/目次

  1. 定期船内の出来事
  2. 憎悪の絆
  3. モール街で起きたこと
  4. 伯爵夫人の説明
  5. しくじった奸計
  6. 決闘
  7. シディエッサの踊り子
  8. 砂漠の戦闘
  9. 黒いライオン“エラドリア”
  10. 影の谷を越えて
  11. ロンドンのジョン・コールドウェル
  12. すれ違った船
  13. “レディ・アリス号”の遭難
  14. ふたたび原始の世界へ
  15. 類人猿から蛮人へ
  16. 象牙の略奪者
  17. ワジリ族の白人酋長
  18. 死のくじびき
  19. 黄金の街
  20. 女司祭長ラー
  21. 難破したひとびと
  22. オパールの宝庫
  23. 五十人の獣人
  24. 再度オパールに
  25. 原生林を抜けて
  26. 新グレイストーク卿

characters/登場人物

ターザン 主人公。密林で育った野生児
ラウール・ド・クード伯爵 フランス政府の高官
オルガ その妻
ニコラス・ロコフ オルガにつきまとうならず者
アレクシス・パウルヴィッチ ロコフの相棒
ダルノー中尉 フランス軍人。ターザンの友人
ウィリアム・セシル・クレイトン グレイストーク卿。ターザンのいとこ
アーキミディース・Q・ポーター教授 アメリカ人の学者。
ジェーン ポーター教授の娘。クレイトンの婚約者
サミュエル・T・フィランダー ポーター教授の秘書兼助手
ジェラール大尉 アルジェリア騎兵隊の士官
ジェルノワ中尉
テニングトン卿 クレイトンの友人
ヘイズル・ストロング ジェーンの親友
ブスリ ワジリ族の戦士
ラー オパールの女司祭長

history/初出

The Return of Tarzan,Jun.-Nov.1915,All-story magazine
The Return of Tarzan,1915,A.C.McClurg

comment/コメント

 刊行予告から数ヶ月遅れで、ようやくお目見えした創元版ターザン・シリーズ第2弾。ファンの欲目としては未訳3冊の刊行に期待を寄せたいが、まずは名作の誉れ高い第1作と2部作を構成している第2巻が順当に刊行された。売れ行き次第では続刊もある、ということは売れなければこれでおしまいとも考えられるわけだ。友人知人親戚一同に声をかけて、ぜひとも売り上げ増に貢献しよう。われわれの地道な努力がバローズ・ブームにつながると、期待したい。少なくともアクセスカウンタ分くらい売れれば、続巻はあるだろうと思う。
 さて、このページをつくっていて気づいたこと。登場人物欄は文庫からの引き写しなのだけれど、実はこの部分、人名のならびもその説明も異様なほどにハヤカワ文庫版に似ているのだ! ならびはジェーンとポーター教授が入れ替わっているほかはアラブ人が消えただけで並び順はほとんど一緒。説明のほうも、同じような案配である。両書を所有している方は、比較してみるといいのかもしれない。編集部がカンニングしたのでは? と、つい疑いたくなるほどだ。まあ仮にそうだとしても本書の刊行意義が薄れることはないし、ハヤカワ版の第2巻は目録落ち状態なのだから気にすることでもないのだが。
 あとがきでは厚木淳氏が高い評価を本書に与えている。シリーズ全般を語る上で、また今後の展開をはかる上で重要な1冊であることを認めるにやぶさかではないが、1冊の作品としてみたとき、できれば真摯に編集者のことばに耳を貸して、書き直して欲しかったと、思える。要所要所はおもしろく書けているだけに、もうひとつ、推敲して欲しかったと思うのだ。

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