吉岡平:著/ソノラマ文庫(朝日ソノラマ)
illustrated by Jun Suemi
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comment/コメント
いまはなき朝日ソノラマ社のソノラマ文庫は、いわゆるライトノベルの先駆だったわけだけど、先駆過ぎたか“ライト”ノベルというにはちょいと重かった。この重さが私の年齢だとちょうどよかったし、子ども子どもしてなかったから中高生の頃も手に取れてよかったよね。高千穂遥『クラッシャー・ジョウ』や、冨野義幸『機動戦士ガンダム』など、楽しませていただきました。
少年向けながら子供だましではなかったこの叢書が、廃刊間近の2004〜2005年にラインナップに加えたのが、このバローズ・リスペクト・シリーズ(笑)。火星、金星ときて、しかもそのラストはなんとペルシダーに迷い込んだ、っていうんだから、期待しますよね。そしたら火星シリーズの前日譚って、まあ、いいですけどね。
作者は世代的にもERB世代で、あとがき読んでても楽しんで書いてるのがよく伝わってくる。よくできたファン・フィクション、というのはプロの作家に対して失礼かもしれないけど、ファン心理が横溢、という意味ですよ。
そして、なんといってもイラストが末弥純さん。武部画伯のイラストを見た最近のSFファンが、「末弥純さんに似ている」とか言ったとか言ったとか。という方なので、まさしく本流の冒険ファンタジー画家の系譜にいることは間違いないです。出版社は消え、文庫も廃刊、親会社だった朝日新聞や他の出版社に拾われなかった作品は消えていったわけで(『クラッシャー・ジョウ』はハヤカワ文庫から出ましたねえ)、本書も今や手に取ることもかなわないわけですが、古本屋などで見かけることがあればぜひ手に取ることをお勧めします。結構面白いですよ。