Illustrated by Motoichiro Takebe
厚木淳:訳/武部本一郎:画/厚木淳:解説 東京創元社/創元推理文庫601-27 /1977.12.16初版/297頁
story/あらすじ
南太平洋で遭難したボストンの富豪の一人息子は、とある孤島に漂着した。しかしそこは文明世界とは隔絶して数十万年を経過してきた忘れられた島であった。徘徊する猛獣、石器時代の野蛮な原住民など、島のすべてが孤立無援の青年の敵であった。彼が蓄積してきた教養も学問も何ひとつ役立たず、贅沢に暮らしてきた青年に実用的知識は皆無だった。しかし彼は偶然知り合った原住民の美少女に励まされて、たくましい原始人へと変貌していく。しかもこの美少女の存在は無言のうちに大きな謎を語っていた!
chapters/もくじ
第T部 洞窟の娘
第U部 洞窟の男
characters/登場人物
ウォルドー・エマースン(サンダー) | ボストンの富豪の一人息子 |
ナダラ | 南海の孤島の娘 |
フラットフート | ナダラの部落のならず者 |
コース | |
ビッグ・フィスト | |
サーグ | 〈悪人〉たちと呼ばれる人食人種の男 |
ジョン・オールデン・スミス=ジョーンズ | ウォルドーの父親 |
バーリンガム大尉 | その友人 |
スターク | プリシラ号の一等航海士 |
ツァオ・ミン | 海賊団の首領 |
history/初出
The Cave Girl,1925,McClurg
comment/コメント
SFというのも気が引けて、冒険小説としたが、SFマークで刊行された作品。第T部「洞窟の娘」、第U部「洞窟の男」の2編の中編連作よりなる構成。第T部だけでも結末はつけられているが、気を持たせる作りで、バローズらしいうまさが光る。1910年代という、バローズとしては最初期の作品だが、単独作ということもあって薄目のゴッタ煮感も気持ちいいくらい。少年の成長物語の構成はERB好みの展開で、個人的にも好きな1冊だが、特に野生の少女ナダラがウォルターのことを虚弱ではない、女に優しいが勇者だと母親にくってかかるところが印象深い。少年冒険小説の佳作。