火星シリーズ MARS series

合本版・火星シリーズ第2集


火星の幻兵団/火星のチェス人間/火星の交換頭脳

火星の幻兵団


Thuvia, Maid of Mars(1920)
The Chessmen of Mars(1922)
The Master Mind of Mars(1928)

Cover Art by Motoichiro Takebe

厚木淳:訳/武部本一郎:画/ 厚木淳、栗本薫:解説  東京創元社/創元SF文庫 SFハ3-40/1999.10.22初版/775頁

この本の表紙絵は権利者である故武部本一郎夫人・武部鈴江さんの許諾により転載しています

story/あらすじ

ジョン・カーターとデジャー・ソリスの息子カーソリスと娘ターラ、そして第二の米国軍人パクストンが活躍する3作を収録する。秘境に再現された古代の帝国ロサールで、観念を具象化できる怪人が数十万の幻の兵士を集め、決戦をくり返す『火星の幻兵団』。進化の究極の形態たる頭だけの人間と、その乗り物である胴体だけの人間が住む秘境バントゥーム、さらに生きた戦死を駒がわりに生死を賭けてチェスを戦う尚武の国マナトールを歴訪する『火星のチェス人間』。火星一の天才外科医ラス・サヴァスが人の脳の移植に成功し、老女帝ザザの邪悪な脳と美女ヴァラ・ディアの可憐な脳を入れ換える『仮性の交換頭脳』。いずれの主人公もカーターとソリスの分身である。

Chapters/目次

火星の幻兵団

  1. カーソリスとサビア
  2. 奴隷
  3. 陰謀
  4. 緑色人の虜
  5. 白い種族
  6. ロサール皇帝(ジェダック)
  7. 幻の弓兵
  8. 死の広間
  9. 平原の戦い
  10. 弓兵隊司令官(オドワール)カール・コマック
  11. 緑色人と大白猿
  12. デュサールの安泰のために
  13. 放浪の戦士(パンサン)タージュン
  14. クーラン・ティス皇帝(ジェダック)の心意気

火星のチェス人間

ジョン・カーター地球にくる Prelude - John Carter Comes to Earth
  1. ターラの不興 Tara in Tantrum
  2. 嵐のままに At the Gale's Mercy
  3. 無頭人間 The Headless Humans
  4. 捕えられて Captured
  5. 完全な頭脳 The Perfect Brain
  6. 恐怖の罠 In the Toils of Horror
  7. 戦慄の光景 A Repellent Sight
  8. 危機一髪 Close Work
  9. 未知の世界を漂う Adrift Over Strange Regions
  10. 罠におちる Entrapped
  11. ターラの選択 The Choice of Tara
  12. ゲークのいたずら Ghek Plays Pranks
  13. 必死の行動 A Desperate Deed
  14. ゲークの活躍 At Ghek's Command
  15. 地下室の老人 The Old Man of the Pits
  16. もう一つの変名 Another Change of Name
  17. 死の競技 A Play to the Death
  18. 忠誠のつとめ A Task for Loyalty
  19. 死者の脅威 The Menace of the Dead
  20. 卑怯者の烙印 The Charge of Cowardice
  21. 愛の冒険 A Risk of Love
  22. 婚姻のまぎわに At the Moment of Marriage
火星のチェス・ジェッタン Jetan, or Martian Chess

火星の交換頭脳

ある手紙
  1. 死者の家
  2. 昇進
  3. ヴァラ・ディア
  4. 約束
  5. 危険
  6. 疑惑
  7. 脱出
  8. 手をあげろ!
  9. ムー・テルの宮殿
  10. ファンダル
  11. ザザ
  12. 巨神タール
  13. サヴァスに戻る
  14. ジョン・カーター

characters/登場人物

火星の幻兵団
カーソリス 赤色人。ヘリウムの王子。ジョン・カーターとデジャー・ソリスとの息子
サビア 赤色人。タース皇帝(ジェダック)スバン・ディーンの娘。美貌の王女
クーラン・ティス 赤色人。ケオル皇帝(ジェダック)。サビア姫の婚約者
アストック 赤色人。デュサールの王子
バス・コール 赤色人。デュサールの貴族
ホルタン・グル 緑色人。トルクワス族の皇帝(ジェダック)
サル・バン 緑色人。トルクワス族の王(ジェド)
タリオ 白色人。ロサール皇帝(ジェダック)。超現実論者
ジャブ 白色人。ロサール人。現実論者
コーマル ロサール人の崇拝する神様
カール・コマック 白色人。ロサール弓兵隊司令官(オドワール)
火星のチェス人間
ターラ 赤色人。ヘリウムの王女。ジョン・カーターとデジャー・ソリスの娘。カーソリスの妹
ガハン 赤色人。ガソール王(ジェド)。放浪の戦士(パンサン)トゥラン
ジョール・カントス 赤色人。ヘリウム帝国の海軍士官。ターラの婚約者
ルード 無胴体人間、バントゥーム族のカルデーンの王
ゲーク 無胴体人間。バントゥーム族のカルデーン
オ・タール 赤色人。マナトール皇帝(ジェダック)
ア・コール 赤色人。〈ジェッタンの塔〉の警備隊長
ウ・ドール 赤色人。マナトールの第8中隊の隊長(ドワール)
ウ・ソール 赤色人。マナトールの第2都市マナトスの大王(ジェド)
ハジャ その妻、ガソールの王女
イ・ゴス 赤色人。マナトールの老剥製師
ラン・オー 赤色人。ガソール人。マナトールの奴隷娘
ジョン・カーター 地球人。火星大イ元帥
火星の合成人間
ユリシーズ・パクストン(ヴァド・ヴァロ) 地球人。元アメリカ合衆国の陸軍大尉
ヴァラ・ディア ラス・サヴァスに買われた奴隷娘
ラス・サヴァス トゥーノルの天才老外科医
ゴル・ハジェス トゥーノルの刺客。豪胆にして武勇の剣士
ヴォビス・カン トゥーノルの皇帝(ジェダック)
ムー・テル ヴォビス・カンの甥、カン家の王子
ホヴァン・デュー 人間と白猿の頭脳を持った大白猿
ザザ ファンダルの女帝(ジェダラ)
ダル・タラス ファンダル帝国の近衛兵
サグ・オール ファンダルの女帝(ジェダラ)の寵臣
カラ・ヴァザ ダル・タラスの恋人

history/初出


comment/コメント

 合本版の第2弾がでた。鮮明画像が美しいこの企画。個人的にはチェス人間の表紙の方が好きだけに、「幻兵団」にこだわるか?という気もするが、そんなところを攻めてもつまらないか。
 さて、合本で興味深いのが解説である。惹句の方は今回は栗本薫で、これはもう解説というよりはファンの一人としての発言に近いものがある。そうそう、という感じ。共感できる。巻末の解説は例によって厚木淳氏がそれぞれの作品について書いている。そして、これはたぶん以前に文庫ででていたものに手を加えたものに違いないのだが、ご存じのように創元版火星シリーズには小西宏訳バージョンと厚木淳訳バージョンがある上に厚木氏は編集者上がりだけあって細かく、再版のたびごとに解説にも手を加えていたりするからマニア泣かせだ。特にディープなファンは小西訳しか持っていなかったりするので、この解説は新鮮かもしれない。って、私がそうだったんですよ。だって、『交換頭脳』はガーンズバックからの注文で嫌々英雄的ではない主人公を書かされたものと思っていたら、自分から書いたものが各社から拒絶されて仕方なくアメージング誌にまわっただなんて、もうびっくり。へえ、そうだったの、という感じ。合本という体裁はともかく、新刊行で新鮮に読み返すのもたまにはいいものですなあ。そういや、コバルト文庫から氷室冴子のジャパネスク・シリーズも版を変えて出し直されているのもそうした感じで過去の読者の囲い込みをねらっているのかな?

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