火星の秘密兵器/火星の透明人間/火星の合成人間
火星の秘密兵器
Cover Art by Motoichiro Takebe
厚木淳:訳/武部本一郎:画/ 厚木淳、鏡明:解説 東京創元社/創元SF文庫 SFハ3-41/2001.06.29初版/925頁
story/あらすじ
第3集たる本巻には、円熟の境に達したバローズによるシリーズ第7作から第9作までを収録する。恐怖の金属分解光線を武器に火星全士の征服を企てる王国に、青年軍人が不可視の飛行艇を操って立ちむかう冒険劇『火星の秘密兵器』。暗殺者ギルドの壊滅をめざして単身敵地に潜入した大元帥ジョン・カーターが、新発明の宇宙船に乗り、人知を超えた火星の月へ旅する『火星の透明人間』。火星随一の天才外科医ラス・サヴァスが最登場し、彼の創造した人造人間たちが大湿原の孤丘に独立王国を打ちたてる、怪奇篇『火星の合成人間』、SF史に名だたる稀代のシリーズは、いよいよ佳境へむかう。
Chapters/目次
火星の秘密兵器
- はしがき Foreword
火星の透明人間
- サノマ・トーラ Sonoma Tora
- 撃墜される Brought Down
- 進退きわまる Cornered
- タヴィア Tavia
- 地下牢へ To the Pits
- 死刑宣告 Sentenced to Die
- 〈死神〉 The Death
- ガースタの蜘蛛 The Spider of Ghasta
- ジャーマのフォル・ターク Phor Tak of Jhama
- 〈空飛ぶ死〉 The Flyng Death
- 「火は熱くせよ!」 "Let the Fire Be Hot!"
- 不可視マント The Cloak of Invisibility
- トゥル・アクスターの女たち Tul Axter's Women
- ウ・ゴールの人食い人種 The Cannibals of U-gor
- ジャハールの戦闘 The Battle of Jahar
- 絶望 Despair
- わたしが見つけたプリンセス I Find a Princess
- 序
- アルシオのラパス
- ファル・シヴァス
- 罠
- 夜の殺人
- 人工頭脳
- 飛行船
- 戸口の顔
- 嫌疑
- バルコニー
- ジャット・オール
- ガル・ナルの屋敷
- ファル・シヴァスの実験室
- 「ふたりとも殺される!」
- 追跡
- サリアめざして
- サリア
- 見えない敵
- キャット・マン
- 死の宣告
- オザラ
- 脱出の試み
- ダイアモンド塔
- 暗黒の牢獄で
- 秘密の出口
- バルスームへ帰る
火星の合成人間
- ラス・サヴァスはどこにいる?
- 大元帥の使命
- 無敵の戦士たち
- 大湿原の秘密
- 国王(ジェド)たちの審判
- 火星の大科学者、ラス・サヴァス
- 生命の培養器
- 赤色人の殺し屋
- ホーマッドになった男
- ジャナイを見つける
- 七王(ジェド)の内紛
- 戦士の報酬
- ジョン・カーター消失
- 怪物が成長するとき
- 大元帥との再会
- 皇帝(ジェダック)は語る
- 進退きわまる
- 反逆の孤丘
- 夜間の脱出
- グーリ大王
- 決闘
- ファンダルめざして
- アムホールの虜囚
- 檻の中
- 動物園の中の大公
- 爬虫類に咬まれる
- 危地に飛びこむ
- 大艦隊
- 再度、モルバスへ
- 二大世界の終焉
- 冒険の結末
characters/登場人物
『火星の秘密兵器』 | |
タン・ハドロン | ハストールの戦士 |
トール・ハタン | ヘリウムの将軍、富豪 |
サノマ・トーラ | トール・ハタンの娘 |
トゥル・アクスター | ジャハールの皇帝(ジェダック) |
カル・タヴァン | トジャナス生まれの奴隷 |
タヴィア | トゥル・アクスターの女奴隷 |
ヌール・アン | ジャハールの貴族 |
フォル・ターク | ジャハールから逃亡した大科学者 |
ファオ | ヌール・アンの恋人 |
ジョン・カーター | 火星の大元帥 |
『火星の透明人間』 | |
ジョン・カーター(ヴァンドール) | 火星大元帥 |
ラパス | ねずみ(アルシオ)とあだ名される卑劣漢 |
ファル・シヴァス | ゾダンガの老発明家 |
ガル・ナル | ファル・シヴァスに対抗する発明家 |
ウル・ジャン | ゾダンガの暗殺ギルドの首領 |
ザンダ | ファル・シヴァスの屋敷の女奴隷 |
ジャット・オール | カーターの部下 |
アル・ヴァス | タリッド皇帝(ジェダック) |
オザラ | タリッド皇后(ジェダラ) |
アラー | オザラの女奴隷 |
アムカ | マセナ人、キャット・マン |
『火星の合成人間』 | |
ヴォル・ダー | ジョン・カーターの親衛隊のヘリウムの士官(パドワール)で貴族 |
ラス・サヴァス | 火星の大科学者兼外科医 |
ジャナイ | アムホールの美女、ヴォル・ダーの恋人 |
トル・ダル・バル | ホーマッド(合成人間) |
ティアイタン・オブ | |
ジャル・ハド | アモールの大公 |
エイマッド | モルバス皇帝(ジェダック) |
ガンタン・グル | アモールの殺し屋 |
タン・ガン | ガンタン・グルのからだを手に入れたトル・ダル・バル |
ウル・ラー | ハストールの士官(パドワール) |
ジョン・カーター | 火星の大元帥。別名ドタール・ソジャット |
パンダル | ファンダル出身の赤色人 |
ガン・ハド | トゥーノル出身の赤色人 |
シトール | モルバスの赤色人将校(デュサール出身) |
history/初出
comment/コメント
合本版の第3集。第2週からかなりあいたのは、『ターザン』映画化による刊行開始だとか、厚木さんが改訳決定版ということでこだわったとか、イラストの鮮明化に時間を要したとか、やはり中身は3冊分だし、版下のデジタル化の手間が馬鹿にならなかったとか、いろいろ考えられるが、売れ行きが芳しくなかったために刊行を見合わされていた、というのではないことだけは祈りたい。
今回の紹介文は鏡明さん。しばらく前に雑誌『奇想天外』での連載コラムを紹介したが、古株のファンで語学力も人脈も分析力もあるひとでありながらバローズを以前から高く評価してくれていたひとなので、コラムの文は読んでいても気持ちがよかったが、今回の紹介文は短いのが残念であるほかは、やはりいい感じだった。近代アメリカのSF/ファンタジー/冒険小説を語るときに無視できない名前であり、日本でも(少なくともかつては)高い人気で受け入れられたという事実をそのまま、評価しているからだ。一時期のハヤカワ文庫の解説にあったような「売れるから出版するけど、自分は評価しないもんね」みたいなのはどうもかえってガキっぽくていやなんだよね。それを、創元の人間である厚木さんがやったのでは当たり前すぎるから、やはり鏡さんなんかがもっと評価していって欲しいものだと思った。
厚木さんの解説はバローズのパロディ小説のほぼ全紹介であったが、こういうのは全文を、アンソロジーなんかに収録して刊行して欲しいなあ。
さて、第4集は無事刊行されるでしょうか?