Illustrated by Seikan Nakajima
佐藤高子:訳/中島靖侃:画/野田宏一郎:解説 早川書房/ハヤカワ・SF・シリーズ3133/1967.01.15初版/181頁
story/あらすじ
地底世界ペルシダーの危難を救い美女ダイアンとともに地上世界に帰ったデヴィッド・イネスだったが、狡滑な男フージャの計略にあい、ダイアンは奪われてしまった――前作『地底世界ペルシダー』はここで終った。果してデヴィッドとダイアンの運命は? そしてその後のペルシダーは? 親友ペリーの消息は? デヴィッド・イネスはダイアンとペリーを探し求めて、ふたたび『機械もぐら』に乗ってペルシダーに向った!
ペルシダーは前にもました恐怖状態に陥っていた――怪物爬虫類の一族マハールの攻撃をうけ、ペルシダー帝国そのものが醜い部族間の争いにあけくれていたのだ。
獰猛な剣歯虎、嘴口竜、巨大な穴居猫が住むジャングルの中を、デヴィッドは二人を求めてさまよい歩いた。その刹那、ジャングルの静寂を破る時ならぬ人間の悲鳴。彼の目の前に現われた粗末なサンダルばき、揮といったいでたちの老人――まさしく親友のペリーだった。彼は人類討伐をもくろむ兇暴なゴリラ人間につけ狙われていたのだ!* 『火星シリーズ』『金星シリーズ』の人気をしのぐバロウズの冒険SF《ペルシダー・シリーズ》の第2弾!
chapters/もくじ
プロローグ
characters/登場人物
デヴィッド・イネス | ペルシダーの皇帝 |
アブナー・ペリー | デヴィッドの親友 |
美女ダイアン | イネスの妻 |
毛深い男ガーク | イネスの第一副官 |
グールク | ソリア族の長 |
コーク | グールクの息子 |
グル・グル・グル | ソリアの近くの部族の長 |
ジャ | メゾプ族の長 |
ジュアグ | イネスの友人 |
狡猾な男フージャ | イネスに敵対する男 |
history/初出
Pellucidar,May.1915,All Story Cavalier Weekly Magazine
Pellucidar,1923,McClurg
comment/コメント
実はこのシリーズのことや冒頭の2部作がバローズの全作品中でどういった位置を占めているのか? といったことはすでにハヤカワ文庫SF版や創元推理文庫SF版のコメントやエッセイで語ってしまっているのだが、それでも書かせてもらおう。この2部作で一応の結末がついたペルシダー・シリーズだが、ここに描かれる脳天気な文明賛美は帝国主義的な文化侵略・植民地主義の投影である。先住民族を駆逐してその版図を拡げていったアメリカ人の、もっとも勢いがあった頃の教育を受けて育ったバローズであるから、ついこういった世界観を持ってしまったとしても――それが当時のアメリカ人に受ける世界観であるという計算もあったかもしれない――やむを得ないとして、ただバローズの志向はむしろ人間の自然回帰・野生主義にあったから、ここには矛盾が広がってしまうわけだ。バローズは悩んだに違いない。それが、2部作終了後のシリーズ中断と、作風を固めた後のシリーズ再開の遠因になっているのだと考える。この2部作は地上人と地底世界との遭遇、という点をのぞいてはなかったことにしないと、バローズは続きが書けなかった。そしてそのために既存の英雄ターザンの力をさえ仰 ぐのである。あとは……読んでいただく他はない。