Illustrated by Shuji Yanagi(left) and Motoichiro Takebe(right)
Pellucidar series volume 1:"At the Earth's Core"
series list/シリーズ・リスト
"At the Earth's Core",1922
『地底世界ペルシダー』ハヤカワSFシリーズ3120/佐藤高子:訳/中島靖侃:画.1966
『地底王国ペルシダ』学習研究社/中学一年コース9月号第5付録/福島正実:文/上泉秀俊、岡野謙二:画/福島正実:解説 ,1966.9.1
『地底恐竜テロドン』偕成社/久米元一:訳/武部本一郎:画,1967
『空とぶ怪じゅう』偕成社/名作アニメート 17/久米 穣:訳/赤坂三好:画,1969
『地底王国ペルシダ』中学一年コース12月号第4付録/福島正実:文/柳柊二:画,1970
『地底世界ペルシダー』ハヤカワ文庫SF16/佐藤高子:訳/柳柊二:画,1971
『地底世界ペルシダー』あかね書房/少年少女世界SF文学全集7/野田昌宏:訳/上矢津:画,1971
『地底の世界ペルシダー』創元推理文庫601-19/厚木淳:訳/武部本一郎:画,1973
『地底人間 秘密の怪獣境』秋田書店,1975
『ペルシダ王国の恐怖』国土社少年SF・ミステリー文庫8/福島正実:訳/山本輝也:画,1983
『ペルシダ王国の恐怖』国土社海外SFミステリー傑作選/福島正実:訳/山本輝也:画,1995.11
"Pellucidar",1923
『危機のペルシダー』ハヤカワSFシリーズ/佐藤高子:訳/中島靖侃:画
『危機のペルシダー』ハヤカワ文庫SF19/佐藤高子:訳/柳柊二:画
『翼竜の世界ペルシダー』創元推理文庫601-20/厚木淳:訳/武部本一郎:画
"Tanar of Pellucidar",1929
『戦乱のペルシダー』ハヤカワSFシリーズ3158/佐藤高子:訳/
『戦乱のペルシダー』ハヤカワ文庫SF22/佐藤高子:訳/柳柊二:画
『海賊の世界ペルシダー』創元推理文庫601-21/厚木淳:訳/武部本一郎:画
"Tarzan at the Earth's Core",1930
『地底世界のターザン』ハヤカワSFシリーズ3192/佐藤高子:訳/中島靖侃:画
『地底世界のターザン』ハヤカワ文庫SF25/佐藤高子:訳/柳柊二:画
『ターザンの世界ペルシダー』創元推理文庫601-22/厚木淳:訳/武部本一郎:画
"Back to the Stone Age",1937
『栄光のペルシダー』ハヤカワ文庫SF35/関口幸男:訳/柳柊二:画
『石器の世界ペルシダー』創元推理文庫601-23/厚木淳:訳/武部本一郎:画
"Land of Terror",1944
『恐怖のペルシダー』ハヤカワ文庫SF37/関口幸男:訳/柳柊二:画
『恐怖の世界ペルシダー』創元推理文庫601-24/厚木淳:訳/武部本一郎:画
"Savage Pellucidar",1963
『ペルシダーに還る』ハヤカワSFシリーズ3244/佐藤高子:訳/中島靖侃:画
『ペルシダーに還る』ハヤカワ文庫SF48/佐藤高子:訳/柳柊二:画
『美女の世界ペルシダー』創元推理文庫601-25/厚木淳:訳/武部本一郎:画Apr.1977
comment/コメント
私的な話になるが、私が最初に読んだERBは野田昌宏訳の『地底世界ペルシダー』(あかね書房版)だった。それからハヤカワ文庫SF版を読み、太古世界シリーズから創元推理文庫へと進んだのだった。それだけ、当時中学生だった私を夢中にさせた地底世界シリーズなので、ぜひとも読んで欲しいという気はする。火星シリーズほど作り物っぽくなく、秘境冒険小説としても読めるので、初心者にはいいかもしれない。もちろん、面白いことは保証する!
青年実業家デイヴィッド・イネスと発明家アブナー・ペリー老人は地底モグラで地底探検に出かけるが、地核を抜けてでた先は恐竜が跋扈する古代世界だった。地球内部は空洞で、そこには太古からの生命が絶滅することなく生きながらえていたのだ! しかもその地底世界の支配者は翼竜のマハール族で、人類は彼らの食料でしかなかった。デイヴィッドは翼竜が支配する時間のない世界で、原始人の美女ダイアンと恋に落ち、やがて地底世界ペルシダー帝国の皇帝として、文明を武器に翼竜マハール族を打ち倒し、地底世界に平和をもたらすべく闘いを開始するが……。
全くの異世界であるバルスームとも現代世界との関わりを断ち切れないターザン世界とも違う恐竜時代と石器時代が共存するペルシダーは、実はもっともバローズ好みの世界ではないか? という気がする。第4作にはターザンも登場し、盛り上げてくれるところが、大衆作家バローズの並外れたところといえる。創元推理文庫の攻勢にあわてた早川書房がついに刊行したバローズというわけで、バローズの日本SF界における地歩を明らかにしたシリーズといった意味でも、注目。
書史的な話に移ると、第1巻は前述の野田昌宏訳版はじめ幾つかの出版社が少年向けSFシリーズで翻訳して出版している。ほかにもいくつかの出版社から出ているが、ここでは入手できているものだけの掲載であることをお断りしておく。ハヤカワSFシリーズ版の刊行などは、創元版のバローズ人気にあわてたSF老舗の早川書房が思わず手を出したとみられる。表紙、口絵、挿画を入れてエンターテインメント作品を中心に刊行されたハヤカワ文庫SFの創刊もそうだと思うが。
第4巻はターザンが登場するほか、火星シリーズや金星シリーズにも登場する人物(ジェイスン・グリドリーだ。彼の発見したグリドリー波が全バローズ作品の鍵を握ってもいる!)が主役を演じるなど、サービス満点な構成となっている。このあたりがバローズらしくて憎いところ。
第6巻は雑誌掲載を経ずに単行本で出版された。これはマガジン・ライターであったバローズとしては珍しいことで、死後に発見された作品や子供向けに書き下ろされた作品をのぞいては唯一ではないかと思われる。
第7巻は作者の死後、リバイバル・ブームのさなかに刊行された。生前に雑誌掲載された連作ものの3中編(未完)に、死後発見された完結編を追加したもので、これは世紀の大発見だったといえるだろう。当時の読者の熱狂ぶりもすさまじかったと見えて、ヒューゴー賞も受賞している。ただこのヒューゴ賞というのはSFファンが選ぶ年間最優秀作品賞だが、人気投票なので、優れているというよりは熱狂的なファンによく受け入れられたという風に見るべきかもしれない。ただこのおかげで7巻の最終話の版権を早川書房が取得してしまい、「バローズに憑かれた男」厚木淳氏が訳せなかったという哀しい現実もある。というわけで、創元版の第7巻は不完全な構成となっている。それでも刊行した厚木氏の執念をほめるべきか。西暦2000年にはバローズの著作権が切れるので、厚木氏の奮起に期待したい。
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