火星シリーズ6 MARS series 6

火星の交換頭脳
The Master Mind of Mars(1928)

Illustrated by Motoichiro Takebe

小西宏:訳/武部本一郎:画/野田宏一郎:解説 東京創元社/創元推理文庫601-06 /1966.11.04初版/263頁

この本の表紙絵は権利者である故武部本一郎夫人・武部鈴江さんの許諾により転載しています

story/あらすじ

 第一次世界大戦のさなか、西部戦線で戦死した合衆国陸軍大尉ユリシーズ・パクストンは、崇拝する人物ジョン・カーターのあとを追って火星に飛来した。彼の到着地点は火星一の名外科医ラス・サヴァスの研究所であった。この天才的な医師は、人間の頭脳を自由に新しい肉体に移植する手術に成功し、折しも、老女帝ザザの邪悪な頭脳を美女ヴィラ・ディアの肉体に移し、美女の可憐な頭脳を老衰した女帝の肉体に移すところだった……

chapters/目次

ある手紙 A Letter
  1. 死者の家 The House of the Dead
  2. 昇進 Preferment
  3. ヴァラ・ディア Valla Dia
  4. 約束 The Compact
  5. 危険 Danger
  6. 疑惑 Suspicions
  7. 脱出 Escape
  8. 手をあげろ! Hands up!
  9. ムー・テルの宮殿 The Palace of Mu Tel
  10. ファンダルPhundahl
  11. ザザ Xaxa
  12. 巨神タール The Great Turn
  13. サヴァスに戻る Back to Thavas
  14. ジョン・カーター John Carter

characters/登場人物

ユリシーズ・パクストン 地球人。元アメリカ合衆国陸軍の大尉
ヴァラ・ディア 赤色人。ラス・サヴァスに買われた奴隷娘
ダル・タラス ファンダル帝国の近衛兵
ザザ ファンダルの女帝(ジェダラ)
サグ・オール ファンダルの女帝(ジェダラ)の寵臣
カラ・ヴァザ ダル・タラスの恋人
ゴル・ハジェス トウーノルの刺客。豪胆にして武勇の戦士
ラス・サヴァス トウーノルの老外科医
ヴォビス・カン トウーノルの皇帝(ジェダック)
ムー・テル ヴォビス・カン家の王子
ホヴァン・デュー 人間と白猿の頭脳を持った大白猿

history/初出

The Master Mind of Mars,Jul.1927,Amazing Stories Annual,Vol.no.1
The Master Mind of Mars,1928,McClurg

comment/コメント

 世界最初のSF雑誌として知られるアメージング・ストーリーズ(異論はあるかもしれないが、近代SFはすなわちアメリカのことだし、かつメジャーであるといえばやはりこれしかない)に発表された1編。SFファン受けをねらってかマッド・サイエンティストが登場する。もともとは異世界ファンタジィの要素が(他のERBの作品と比較しても)強かった火星シリーズだが、その中でかいま見える超科学を背景にしたSF的アイディアが先駆的だっただけに、安易すぎる感じで残念。後続の巻でもマッド・サイエンティストは頻繁に登場してきてしまうが、やはりこの巻の影響なのだろうか。

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