Illustrated by Motoichiro Takebe
厚木淳:訳/武部本一郎:画/厚木淳:解説 東京創元社/創元推理文庫601-10 /1968.09.03初版/405頁
story/あらすじ
太古の昔、絶滅したと伝えられる白色人帝国にさまよいこんだジョン・カーターは、はからずも美しい孫娘のラナと再会した。恐るべき魔境の呪いから危機一髪脱出した二人の前途には悪名高き黒色人種ブラック・パイレーツが待ちかまえていた。いっぽうラナの故国ガソールは北極の冷凍人間の大群に包囲されて、いまや陥落寸前である。カーターは一刻も早くヘリウムにもどり、大艦隊をひきいて救援にかけつけなければならない。腹背に敵を受けた地球と火星、両世界きっての剣豪、ジョン・カーター畢生の大冒険!
chapters/目次
はしがき
第1部 古代の死者たち1.-13.(章題なし)第2部 火星のブラック・パイレーツ1.-13.(章題なし)第3部 火星の冷凍人間1.-13.(章題なし)第4部 火星の透明人間1.-13.(章題なし)
characters/登場人物
ジョン・カーター | ヘリウムのプリンス。火星大元帥。地球人 |
ラナ | ガソールの王ガハンの娘。カーターの孫娘 |
パン・ダン・チー | オロバール人。ホルツの戦士 |
ホー・ラン・キム | ホルツの皇帝 |
ラム・タル・オー | ホルツの地下の奇怪な人物 |
ヒン・アプトル | 北極パナールの皇帝(ジェダック) |
ジャド・ハン | アムホールの戦士。ジャナイの兄 |
タン・ハドロン | ハストール出身のヘリウム将校 |
ゴル・ドン | パナール人の士官 |
フォ・ナール | デュサール号の第一士官 |
history/初出
"Llana of Gathol",1948,Burroughs
comment/コメント
ジョン・カーターの娘ターラとガソールのガハンのロマンスがあったのは記憶していたが、ついにその娘(カーターの孫!)の物語が現れた。火星では不老不死(正確には2,000年程度が寿命)とはいえ、はしがきに登場するカーターの親戚(!)、ハワイに移住した後のERBの老境の姿は痛々しくもある。このはしがきは単行本化の際に書き加えられたものなので、ERB自身が筆を折ってから数年後、死の2年前の文章ということになる……何かもの悲しいのは、そういった事情が現れているからなのだろう。それと比べてカーターの若々しさはどうだ。ちなみに、ERBの他のヒーローも一様に不老不死だが、何らかの理屈(ペルシダーは時間のない世界であるとか、アムターでは不老不死の薬が開発されていたりとか)をつけられている。問答無用なのはジョン・カーターだけである(ターザンは人間離れしているのでのぞく)。ヒーローは老いを知らない、というか老いるべきではないという、美学なのだろうか。
物語は、4回に分けて雑誌連作した都合もあってかサービス精神旺盛な、展覧会のような構成になっている。金星の4巻目とかペルシダーの7巻目とか、晩年のERBには多いパターンではある。詳しくは厚木氏の解説を読んでもらえればと思う。
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