ターザン・シリーズ12 TARZAN series 12

密林の王者ターザン
Tarzan,Load of Jungle(1928)


story/あらすじ

 アラビア人イブン・ジャッドの隊商は弟トログと部下ジャードのわるだくみ、部下ゼイドと娘アテジャの恋愛など内に問題を抱えながら、財宝と美女の秘境ニムダを目指している。アメリカ人スティンボルとブレークもまたアフリカの地を進んでいたが、スティンボルの傲慢さにブレークや荷役の黒人たちが反発し、隊を割ることになる。
 突然の雷で隊とはぐれたスティンボルはアラビア人の隊商に、ブレークはニムダに迷い着く。ニムダは十字軍遠征中に遭難したリチャード獅子心王の配下たちが独自に築いた峡谷の城塞で、数百年もの間、サラセン人に対抗すべく生きながらえていたのだった。ブレークはそこで騎士サー・リチャードと親しくなり、騎士として力を発揮していく。また、城主の娘ギノーダ姫に恋心を抱く。同じく十字軍の末裔であるセパルチア城の騎士たちとの恒例の競技会に出場し、活躍するブレーク。
 そのとき、イブン・ジャッドは奴隷ウララの生誕地ガラの村長に教えられ、ニムダに到着、無人のセパルチア城を落とし、さらにニムダ城を狙う。競技会はニムダ城の勝利となるが、セパルチア城のボーハン王はギノーダ姫を略奪し、逃亡する。ブレークはそれを追い、単身姫を奪回するが、偶然遭遇したアラビア人に奪われてしまう。
 アラビア人側では反逆に失敗したジャードがスティンボルとギノーダ姫を連れて逃走。そこにさらに類人猿の群があらわれてギノーダ姫を争う……。ニムダに到着したターザンは、無事事態を解決できるか?

chapter/目次

  1. 象はタントー Tantor the Elephant
  2. 野生の仲間 Comrades of the Wild
  3. 類人猿トヤットの群れ The Apes of Toyat
  4. ゴリラはボルガニ Bolgani the Gorilla
  5. ターマンガニ The Tarmangani
  6. 稲妻はアラ Ara the Lightning
  7. 十字架 The Cross
  8. 蛇の襲撃 The Snake Strikes
  9. サー・リチャード Sir Richard
  10. ウララの帰還 The Return of Ulala
  11. サー・ジェームズ Sir James
  12. 「明日よ、なんじはディースト!」"Tomorrow Thou Diest!"
  13. ゼイドのベイドにて In the Beyt of Zeyd
  14. 剣と盾 Sword and Buckler
  15. 手袋だけが The Lonely Grove
  16. 偉大なる挑戦者 The Great Tourney
  17. 「サラセン人だ!」 "The Saracens!"
  18. 黒騎士 The Black Knight
  19. 王者ターザン Lord Tarzan
  20. 「愛しています」 "I Love You!"
  21. 「あらゆる宝石に血の滴りを」"For Every Jewel a Drop of Blood!"
  22. 類人猿の花嫁 Bride of the Ape
  23. ジャド−バル−ジャ Jad-bal-ja
  24. 臭跡がたどり着いたところ Where Trails Met

character/登場人物

ターザン ジャングルの王者。英国貴族グレイストーク子爵ジョン・クレイトン。ワジリ族の酋長でもある。
フェジュアン(本名ウララ) ガラ出身の黒人奴隷の頭。子供の頃エル・ハバシュからさらわれ、イブン・ジャッドの奴隷となった。
イブン・ジャット アラブ人エル・グァド族の頭目。財宝と美女略奪のため、エル・ハバシュにあるという伝説の都ニムルを捜している。
トログ イブン・ジャットの弟。悪だくみをしている。
ゼイド アテジャと恋に落ちたアラブ人の青年。アテジャに好意を持っている
アテジャ イブン・ジャットの娘。ファードと結婚させられそうになっている。
ハーファ イブン・ジャッドの妻
ファード アラブ人。イブン・ジャッドの一行。トログと悪だくみをしている。フランス語ができる。アテジャの婚約者。
モトログ イブン・ジャッドの一行。
アバス 黒人。フェジュアン同様、子供の頃からイブン・ジャッドの奴隷。
アブド・エル・アジズ イブン・ジャッドの一行
トヤット ターザンがいた巨大類猿人種族のかしら
ムワラット トヤットの群れの類人猿
ガヤット
ズソ
ゴヤッド トヤットの群れの類人猿。トヤットとギノーダ姫を奪い合う。
ジェームズ・ハンター・ブレーク アメリカ人青年。野獣の生態の撮影のためにスティンボル隊に加わってアフリカにきた。
ウィルバー・スティンボル ニューヨークのスティンボル証券会社社長。ブレークのサファリの隊長。短気で傲慢でわがままな嫌われ者だが悪人ではない。
サー・リチャード・モンモラシー ニムルの騎士。ジェームズを助ける
ピーター・ウィッグス ニムルの衛兵。黒人。
パウル・ボドキン ニムルの衛兵。黒人。リチャードの部下。
マイクル 少年。リチャードの従者
エドワード 少年。ブレークの従者
サー・マラド ニムルの騎士。ギノーダ姫の婚約者。
ゴバード侯 リチャード獅子心王の部下ゴバードの子孫。ニムル城の城主
ブリニルダ妃 ゴバード候の妻
ギノーダ姫 ゴバード候の娘。絶世の美女。ブレークに好意を抱く。
サー・バートラム ニムルの騎士。ターザンがニムルに入場するのを案内した。
ボーハン王 リチャード獅子心王の部下ボーハンの子孫。ニムル城の仇敵、セパルチア城の城主。ギノーダ姫に横恋慕する。
サー・ガイ セパルチア城の騎士。ブレークと馬上試合をおこない、敗れる。
サー・ウィルドレッド セパルチア城随一の騎士。ブレークと馬上槍試合をおこない、相打ちになる。
サー・バランド セパルチア城の守備隊指揮官をつとめる老騎士。
モーレイ セパルチア城の衛兵。
パーシヴァル セパルチアの騎士。
タボ ガラ族の黒人。ウララの兄
バタンド ガラ族の村長
ジャド・バル・ジャ 金色のライオン。ターザンの親友。

history/初出

Tarzan,Load of Jungle,Dec.1927
Tarzan,Load of Jungle,1928

comment/コメント

 ターザンを象徴するようなタイトルなのに、ハヤカワ文庫版には収録されなかった。残念。というわけで、長く未訳と思われていたが、「おいたち編」を刊行している河出書房がもう一冊「密林の王者」編も出していて、それがなんと、本作の邦訳版なのだ。こちらでは訳者の大久保氏が解説を書いていて、それによれば、大久保氏といえば日本の英米文学翻訳家としては有数の方だが、実はひそかにターザンの原書を取り寄せて愛読していたという隠れファンで、この翻訳の依頼はもう喜んで引き受けたのだとか。うーむ、あなどりがたし、ターザン。

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