Illustrated by Motoichiro Takebe
高橋豊:訳/武部本一郎:画/森優:解説 早川書房/ハヤカワ文庫特別版SF105 /1972.01.15初版/301頁
story/あらすじ
密林へ駆り立ててやまぬ野生の血−内にたぎる冒険心に誘われたターザンは、最愛の妻ジェーンを残し、ワジリ族を率いて再度黄金の都オパルへと旅立った。そして埋もれた宝石庫を発見、だが突如崩れ落ちた岩の衝撃で彼は人間としての記憶を失い、ひとりジャングルをさまよいはじめる……一方、平原のバンガローに待つジェーンは、ワジリ族の運び出した財宝を狙う盗賊団の襲撃を受けて連れ去られる。今はただの類人猿に戻ったターザンに、夫の救いを求めるジェーンの祈りが通じるはずもなく、オパルの財宝をめぐって、事件はワジリ族と盗賊団、それに彼らを追うエチオピア軍を交えた凄絶な闘いへと進展していく!
chapters/目次
characters/登場人物
ターザン ジャングルの王者。英国貴族グレイストーク卿 ジェーン ターザンの妻 アルベール・ウェルペル コンゴ駐留ベルギー軍の脱走兵 アクメット・ゼック アラブ人の盗賊団の首領 モハメッド・ベイド ゼックの部下 ラー オパルの女司祭長 ブスリ ワジリ族の戦士 ムガンビ アーブドゥル・ムラク エチオピア軍の隊長 チュルク 類人猿 タグラット
history/初出
Tarzan and the Jewels of Opar,Nov.18-Dec16,1916,All-Story Caval magazine
Tarzan and the Jewels of Opar,1918,McClurg
comment/コメント
オパールの女王ラーが美しく描かれている表紙だ。武部本一郎の趣味は、育ちの良さはあれ所詮アメリカ娘にすぎないジェーンよりは秘境の伝説の王国の美女であるラーのほうにあったのでは、と勘ぐりたくなる。まあジェーンにはパルプ雑誌のヒロインという制約もあったわけで、まず読者に受ける(求められる)小説を当時の基準で書くとなればやむを得ないところでもあるのだろう。その分、ラーや地底世界シリーズのオー・アアは制約を離れて魅力的に描かれている。バローズの筆力は決して類型におさまるものではなかったことの証左といえるだろう。しかし、それが故にヒロインとなれず、従ってターザンと結ばれることのない永遠の処女王ラーはかわいそうだ(後続の巻では処女喪失も暗喩されているとはいえ)。
また、本作はターザンものがアフリカの秘境を舞台に置いた作品群へと脱皮していく過程における重要なターニングポイントで、初期の作品中でも傑作のひとつといっていい出来であることは、言わずもがなのことではあるけれども、断っておきたい。
ホームページ | 作品リスト
ターザン・シリーズ | 1
2 3 4
5 6 7
8 9 10
11 12 13
14 15 16
17 18 19
20 21 22
23 24 25
26 / op